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一本木の野原に少し小高く盛り上がった所があり、そのまん中には奇麗な女の樺の木があった…。美しい樺の木をめぐる土神と狐の切なさや嫉妬を描いた宮澤賢治作品。緻密かつ大胆な線と色遣いで、複雑な感情を描く。
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野原の北はずれに、一本の綺麗な女の樺の木がありました。黒光りする幹から美しく伸びる枝。秋になれば黄金や紅の葉をゆらし、多くの鳥達を魅了しました。樺の木には、二人の対照的な友人がいました。一人は、ドロドロの谷地の中に住んでいて、正直者ですが大変みすぼらしく荒々しい土神。もう一人は、野原の南からやってくる、少し不正直ですがとても上品な紳士の狐でした。二人は、互いに美しい樺の木に心を奪われます。樺の木のもとへ通いつめては会話を交わし、樺の木の関心を引こうとする二人。樺の木をすっかり魅了してしまう知性あふれる狐の饒舌な語りに比べ、どこまでも口下手で泥臭い土神は、叶わぬ恋心の切なさと嫉妬からもがき苦しむのです。それから幾ばくか時間がたち、土神はようやく自分の心が穏やかになり、今なら二人のことを受け入れることができるのではないだろうかと思い、樺の木のもとへ向かいます。そこへあの狐もやってきて・・・。物語は、はっきりとした結末が語られていません。土神が見た狐の本当の姿。なぜ狐は自分自身を自嘲するな笑みをうかべ死んだのか。そして、土神は自分のしてしまった過ちから何を感じ、悟ったのか。樺の木はどうなったのか。たくさんの疑問符を胸に残しつつも悲しみと同時にあたたかみを感じるのはなぜでしょうか。賢治の物語の中でこれほど人間的な作品はないように思います。「宮沢賢治の画本」シリーズで美しいだけではない賢治の世界観を見事に表現されている小林敏也さん。重みのある印象的な絵が、土神の感情を一枚絵として切り取りその痛々しく突き刺さる心象風景を私たちの心の中に記録していきます。表紙の情熱的な赤の土神と裏表紙の美しい夜空の下、樺の木に雄弁に話しかけている狐の姿が、表裏一体のように思えて、またなんとも意味深です。是非とも書棚にそろえていきたいシリーズの一冊です。
(絵本ナビ編集部 富田直美)
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