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[BOOKデータベースより]
いまや全国1万カ所以上、市場規模1兆円ともいわれる直売所は、農家の女性たちがみずから切りひらいた「自立」の空間だった。訪れればそこには、人びとの笑顔と希望があふれ、農・食・地域経済の未来が映しだされている。
農産物直売所の展開
[日販商品データベースより]第1部 自主的に立ち上がってきた「直売所」(栃木県鹿沼市/直売所、加工場、農村レストランの展開―三点セットで集落活性化に向かう「そばの里永野」;富山市池多地区/多様な地域貢献に発展する直売所―農村女性の「学び」から生まれた「池多朝どり特産市」;長野県伊那市/日本最大級の直売所の展開―ネットワークの形成に向かう「グリーンファーム」;高知市鏡地区/攻めの産直―「村」から都市部に進出した「山里の幸・鏡むらの店」)
第2部 市町村、公社等がリードする「直売所」(福島県西会津町/ミネラル野菜のまち―「道の駅よりっせ」の直売所と農村レストラン;東京都八王子市/大都市部における展開―都内初の道の駅併設型農産物直売所「ファーム滝山」;島根県吉賀町/有機農業の村から―自給的暮らしの豊かさを発信する「エポックかきのきむら」;兵庫県淡路市/御食つ国の産地直売所―行政が立ち上げた交流施設「赤い屋根」;北海道長沼町/直売所から始まった農業を基軸とした地域産業―直売所「マオイの丘公園直販所」を起点に連鎖的に展開)
第3部 JA系「直売所」の展開(岩手県花巻市/農協経営の本格的直売所の展開―全国の先駆けになった「母ちゃんハウスだぁすこ」;福岡市/大都市圏の農産物直売所の展開―激しい競争にさらされる「博多じょうもんさん」)
農産物直売所の未来
10年ほど前から、日本の地域産業問題の究極のテーマは「中山間地域の『自立』」と考えていたのだが、当時はそうした発言をしても関心を抱いてくれる人は稀であった。だが、この数年、事態は大きく変わってきている。変化を促した最大の要因は、意外な成功を経験した20世紀後半の日本の経済発展モデルが輝きを失い、人びとが新たな価値に目覚め始めたということではないか。特に、近年は「食」の「安心、安全」との関連で「農」への関心が高まり、中山間地域に視線が向けられていった。日本の面積の70%を占め、国土保全の基本となっている中山間地域。そこには、成熟社会、人口減少、高齢化などの私たちの未来を考えていく際の先行的な現象が深く進行しているのであり、そこから全国の「地域」への示唆を読みとることができるであろう。そして、ふと訪れる中山間地域の片隅で私たちは「不思議な輝き」に出会うことになる。その空間は「農産物直売所」と名乗っていた。疲弊しているはずの中山間地域に、農村女性たちによる「思い」のこもった「場」が形成されていたのであった。特徴として、何よりも農村女性たちが「自立」し始めたという点が指摘される。これまでの日本の農業政策と農協の管理の下で、思考を停止させられていた人びとが、自分の「思い」を表現するようになったことの意義は極めて大きい。実際、全国の各地を訪れるほどに日本の奥行きの深さを痛感させられた。いずれの地域でも興味深い取り組みが重ねられていた。
本書では全国の「農産物直売所」に焦点を絞り、各地の11の施設に注目していくことにする。どの直売所を訪れても、それぞれに特色があり、多様な工夫が凝らされていることに感動するであろう。いずれも女性たちの「思い」の深まりがこめられていた。ここから、日本の農村、農業、あるいは日本社会そのものが変わっていくのではないかと思う。
(編者 関 満博)
★本書に登場する11の地域:栃木県鹿沼市、富山市池多地区、長野県伊那市、高知市鏡地区、福島県西会津町、東京都八王子市、島根県吉賀町、兵庫県淡路市、北海道長沼町、岩手県花巻市、福岡市