[BOOKデータベースより]
パリのヴォケール館に下宿する法学生ラスティニャックは野心家の青年である。下宿にはゴリオ爺さんと呼ばれる元製麺業者とヴォートランと名乗る謎の中年男がいる。伯爵夫人を訪問したラスティニャックは、彼女が、ゴリオの娘だと知らずに大失敗をする。ゴリオは二人の娘を貴族と富豪に嫁がせ、自分はつましく下宿暮らしをしていたのだ。ラスティニャックはゴリオのもう一人の娘に近づき社交界に入り込もうとするが、金がないことに苦しむ。それを見抜いたヴォートランから悪に身を染める以外に出世の道はないと誘惑されるが、ヴォートランが逮捕され、危やうく難を逃れる。娘たちに見捨てられたゴリオの最期を見取った彼は、高台の墓地からパリに向かって「今度はおれとお前の勝負だ」と叫ぶ。
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一般的には『ゴリオ爺さん』という題名で知られているが、鹿島茂訳では『ペール・ゴリオ』と全部片仮名にしてある。「爺さん」のほうは高校生のころ義務感で読んだが、鹿島訳が出たときにはすっかり中身を忘れていた。そこで買い直して、近所の軽食屋で読み始めたら、1行目からひきこまれ、「すみません。もうとっくに閉店しています」と肩を叩かれるまで気づかなかった。おかしい話だ。すごくおかしい。爺さんの人生はかわいそうなのだが、彼の住む下宿館の住人模様がおかしい。ところが「このシーンさえ辛抱すれば、あとは読み進められる」などと言う人がいる。鹿島先生まで言う。翻訳ものを読み慣れない読者に気を遣ったのだろうか。それとも世の中の多くの人はこの部分をつまらないと感じるのだろうか。どっちなのかわからないが、私はおかしくておかしくてたまらないのだから嘘はつけない。声を出して笑うほどおかしい。「人間喜劇」は何冊にもわたるので、そうそう読み返せないのだが『ペール・ゴリオ』だけ読み返すのは、この下宿館の描写がおかしいからである。よって、ホーソンの『緋文字』の冒頭の、延々と続く税関の叙景描写部分も大好きだ。だっておかしいんだもん。
姫野カオルコ(姫野嘉兵衛)/作家 小説家
3 SPECIAL BOOKS掲載日:2013/12/19
【情報提供・3 SPECIAL BOOKS】