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[BOOKデータベースより]
いつもおもう。人間はなにによって自分を育てるのだろうか。わたし自身は、殺されたり心中したり、逃亡したりした遊女たちの、形容不可能な心と姿にみちびかれ、夕べの海の光や、祖母であった狂女と自分に降った、深夜の雪のようなものに育てられた。貧しい細民たちの住む町に育てられた。そこでは、喧嘩も欲望も、肺病も性病も狂気も、子どもらの前にさらされていた。生と死の境を超えて光芒を放つ人びと。幼児の心の奥底に映った風土の原イメージ。ことばをもたなかったころの人間の五官が捉えていた世界を、幻花の詩句のように透明なことばで紡ぎつづける著者のエッセイ集。
簪
水底の夕昏れ
お初の足のおゆび
鬼女ひとりいて
地母神
父なる思想―林竹二先生の田中正造研究
泉への遡行
赤い苦瓜
人間が懐しい
海辺に巨きな人が―隅本栄一さん
草の向うに―坂本マスオさん
昔の青年団―森山忠さん
花ふれあいて―白倉幸男・なる子さん
雪の降りにも―木下レイ子さん
ニセ釣舟―小崎照雄さん
雪の舞う夜のために―相思社10年
湯のみのはなやぎ
お寺の青年たち
水脈玲瓏―橋川文三先生のこと
「神高い人」を後に残して―島尾敏雄氏を悼む
谷川雁さんへ―『賢治初期童話考』を読んで
『黒い雨』をよむ
三博士の礼拝―ヒエロニムス・ボッス〔ほか〕