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[日販商品データベースより]
「ファーストキスを、舞台に捧げてはいけないよ」
天才女優――と称されるわたし・氷上沙凪は、高校に通い始めた。学校といえば青春だ。台詞以外では口にしたことのないその言葉は、濁音を含んでいないのに舌がざらつくような、不快な感じがしていた。
ある日、"恩人"である環さんからの頼みもあり、突然押しかけてきた演劇部の部長・朱莉先輩に演技指導をすることになった。日野朱莉。脳裏にちらつく黒髪を、犬の尻尾を幻視するようなポニーテールにした、先輩。一生懸命演技をすれば、必ず観客に届くと信じている無垢さ。困難を前にしても自らを奮い立たせ、挑み続ける前向きさ。「汗っかき」と言っていた体から香る、制汗剤の匂いまで。先輩は、不快だった。
不快だった、はずなのに――。