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- 光線
-
文藝春秋
村田喜代子
- 価格
- 1,650円(本体1,500円+税)
- 発行年月
- 2012年07月
- 判型
- B6
- ISBN
- 9784163815503
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[BOOKデータベースより]
東日本の大地が鳴動した数日後、ガンの疑いが現われる。日本列島の南端の町で、放射線治療を受ける一ヶ月余のあいだ、震災と原発をめぐる騒動をテレビで繰り返し見つめつづけた。治療を終え、ガンが消えた身体になった著者は、「自分も今一度生きよう」と心に決める―。一国の災厄と自らの身に起きた変動を、見事に文学へと昇華した稀有の連作小説。
[日販商品データベースより]作家の村田喜代子さんは、東日本大震災の数日後に子宮体ガンが発覚。摘出手術を避け、鹿児島市で一か月間、強いX線のピンポイント照射を受けて、3か月後にガンは消滅しました。治療中、放射線宿酔でふらつく体で震災関連のニュース、福島原発の推移をテレビで見るうちに、ある不思議な気持ちが芽生えてきた、とおっしゃいます。
「文學界」でこの一年半の間に発表された連作6編のうち、「光線」「海のサイレン」「原子海岸」「ばあば神」の4編は、この村田さんの内なる震災体験から生まれました。原発からもれる放射線と、自分の下腹部にあてられる放射線が混ざり合うのを感じる、という村田さんならではの感覚、個人と社会の災厄が重なるという稀有な体験が、作品の随所で顔をだし、見事に文学に昇華されています。
「こうして6作の異なる短編の顔を見較べると、これも『地』というものの話だった。人間の生きる所は、すべて『地』によっている」(あとがきより)
本の最後に収められたのは、震災前に書かれた「楽園」。山口県のカルスト台地の地下800メートルに位置する鍾乳洞で行われる〈暗闇体験〉。一人の探検家が文中でこう言ってます。「洞窟に潜ることは、存在とか認識に関わる哲学体験であり、造物主に近づいていく創造的体験である。またその体験をしているとき、自分にとって地上は『楽園』である」。この足の下の場面が永遠に盤石であることを願い、この光あるタイトルの作品をラストにもってきました。
読売新聞、朝日新聞ですでにこの連作については取り上げられ、村田さんの新境地を示す、ターニングポイントとなる作品であることは間違いありません。