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- 価格
- 748円(本体680円+税)
- 発行年月
- 2019年11月
- 判型
- 文庫
- ISBN
- 9784591164457
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読後感良し
主人公アイはシリアから引き取られた養子である.小学校まではニューヨーク,中学校以降は日本で過ごしている.その容姿が周囲とは異なることからいわゆる「お客さん」扱いされることが多く,「自身ではなく別の子が養子になるべきではなかったのか」という罪悪感に似た感情から内向的で孤立することを選ぶ少女だった.この辺りはシリアの状況が予備知識としてあると非常に理解しやすいと思う.
高校に入学して最初の数学の授業で教師に言われるのが「この世にアイは存在しません」という言葉である.この「アイ」は数学での虚数のことであり主人公の名前を指しているのではないが,この先ずっと彼女の中で響き続けることになる.
しかしこの高校生活で親友となるミナ,大学院時代に入り伴侶となるユウと出会い様々な葛藤を通して自身の存在を高らかに存在する過程が描かれる.そこにはもちろん彼女を養子として迎えた両親の愛情と見守りがバックグランドにある.
アイはその罪悪感にも似た感情からいつしか世界で起こった大きな事件,事故の犠牲者数をノートに記すようになる.(なお,作中のすべてのケースは事実である!)特に最後に取り上げられる件の写真の痛ましさは世界に大きな衝撃与えたことが思いだされる.
この時代性も著者が意識したもので,巻末の対談で最後にこう締めくくっている.「ほんとに“今”読んでほしい.ここに書いてあることは“今の世界”やから,ビビッドなうちに読んでもらえたらうれしいです.」
ではアイが「シリア出身の養子」であることや取り扱われる事故・事件の時代性を差し引いたらこの小説の魅力や意義はなくなるのか?そんな心配はご無用.そこには色褪せない人間の普遍性を見出すことができるのである.
[BOOKデータベースより]
「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる、ある「奇跡」が起こるまでは…。西加奈子の渾身の「叫び」に心ゆさぶられる傑作長編。
[日販商品データベースより]アメリカ人の父と日本人の母のもとへ、養子としてやってきたアイ。
内戦、テロ、地震、貧困……世界には悲しいニュースがあふれている。
なのに、自分は恵まれた生活を送っている。
そのことを思うと、アイはなんだか苦しくなるが、どうしたらいいかわからない。
けれど、やがてアイは、親友と出会い、愛する人と家族になり、ひとりの女性として自らの手で扉を開ける――
たとえ理解できなくても、愛することはできる。
世界を変えられないとしても、想うことはできる。
西加奈子の渾身の叫びに、深く心を揺さぶられる長編小説。
累計21万部!巻末に又吉直樹氏との対談を収録
残酷な現実に対抗する力を、この優しくて強靭な物語が、与えてくれました。――又吉直樹
読み終わった後も、ずっと感動に浸っていました。なんてすごいんだろう。この小説は、この世界に絶対に存在しなければならない。――中村文則