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[日販商品データベースより]
発表時に「面白すぎる」と評された還暦男2人の抱腹絶倒旅行記
新作映画公開に合わせて単行本化!「昭和」を思う存分楽しもう
同人誌の文章が新聞に取り上げられることなどまずないが、著者が自身の参加する同人誌に書いた旅行記が記者の目に止まり記事になった。
「これが大変な代物であった。還暦を過ぎたおじさん二人の旅行記に、私は床でひっくり返った甲虫さながら、手足をばたばたさせて笑い転げた。軽妙な文章のほぼ全編に、冗談がまぶされている。旅程とともに、書き手の個人史をもなぞるように文学や歴史、昭和のサブカル知識が、これでもかと開陳される。面白すぎる。」(「河北新報」2024年3月8日夕刊「記者ログ」)
記事にあるように、本書はその同人誌に掲載された還暦過ぎのおじさん二人、著者と探偵小説マニアの友人が奈良、岡山方面を旅した珍道中の記録を単行本化したものだ。
道中の二人を不測の事態が次々と襲う。行きの夜行バスの車中では、まだ目的地に着いてもいないのに友人の足がつったり、奈良の明日香村では、友人が電動自転車に乗ったまま田圃に突っ込んだりした。老化が原因としか思えないそうした出来事を、二人は厩戸皇子(聖徳太子)の呪い≠ゥ、『八つ墓村』の祟り≠ニみなして旅を続ける。
横溝正史が『八つ墓村』を書いた疎開宅までの道のりが、ウォーキングマップ上ではそれほどでもなさそうなのに実際には死ぬほど遠かったのも、ロードサイドの古本屋で掘り出し物の『チェーホフ全集』全16巻を見つけて買うはめになったのも、すべて祟り≠フせいである。ローカル線の井原線では、予定している上り電車に乗り遅れないように時間を厳守しつつ、下りの電車でどこまで行けるかトライしてみるという、西村京太郎トラベルミステリーばりの突発的な事態も出現した。
旅行記のいたるところに昭和のサブカル知識が満載だが、そこで語り尽くせなかったことは、「クロスワードパズル」付きの短編小説(たぶん本邦初)「一九七三年の切手シート」として新たに採録された。
昭和≠ヘこうやって味わい楽しむもの――本書はその実践例である。(かしべ・ろく)