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東京堂出版 中村義裕
点
劇団つかこうへい事務所での盟友・風間杜夫、平田満との鼎談、共演歴40年の高畑淳子との対談をはじめ、加藤健一と芝居を創ってきた天宮良、綾田俊樹、上杉祥三、小田島恒志、熊谷真実、清水明彦、竹下景子、西山水木、畠中洋、一柳みるなどの仲間たちからのメッセージ、子息・加藤義宗、教え子・加藤忍へのインタビューも収録。
第一幕 所属俳優たった一人の事務所第二幕 筆者が選ぶカトケン・ワールド第三幕 加藤健一と話す、聴く第四幕 旅日記『滝沢家の内乱』第五幕 映像の仕事について
加藤健一。今年、令和七年(二〇二五)で役者生活五十五周年、事務所創立四十五周年の節目を迎えるという。私が彼の舞台を観始めたのは三十年と少し前のことになる。以来、すべてを見尽くしたわけではないが、かなりの数の舞台を観ている。演劇界での評価も高く、批評家としての私の評価も同様だ。今回、二つの「記念」が重なり、今までにこうした書籍が出ていないこともあり、一人の批評家が観てきた舞台や、本人との対話、共演者との座談など、さまざまな角度から「加藤健一」という役者(あえて俳優とは呼びたくない)を眺め、記録をすることにした。十時間を超える対話や、過去の舞台を振り返り、自分で書いた劇評を読み、加藤が演じた戯曲を読み直した中で気づいたことがある。いろいろな意味で、加藤健一は、稀に見る「大いなる異端」ではないのか、ということだ。これまでの役者人生、演じた作品、演技論、物の考え方……。今までに何人かの役者論を書いてきたが、こうした感覚の持ち主には出会ったことがない。すべての考えに諸手を挙げて賛成というわけではないにしても、「なるほど……」と肯く部分も多かった。(中略)加藤の事務所は特別で、「プロデューサー」「演出家」「俳優」の一人三役をこなしている。(中略)加藤の場合は、いろいろな事情で始めた「加藤健一事務所」の旗揚げ公演が一人芝居で、多くのスタッフを必要とせずにほとんど自前でこなしたこと、公演を打った劇場が定員七十人程度の小劇場だったこと、好評で黒字が出て、次へつなげられたことなどの幸運も手伝ったスタートだった。本人の獅子奮迅の努力と渾身の演技があってこそだが、失敗すれば無一文の可能性もあり、まさしく「神の見えざる手」の救いだったのだろう。加藤が持てるすべてを注ぎ込んだ公演に、演劇の女神が微笑んで、この世界で生きるチャンスを与えてくれたのだろう。それを次に活かせたのは、本人の才気であることは言うまでもない。とはいえ、それ以降、年に三本から四本の芝居を自らのプロデュースで演じ続け、今までに百四十回を超えるプロデュース公演を行った例を、私はほかに知らない。(中略)これだけの年数、回数を重ねるためには、ただ芝居が巧いだけでは成立しない。プロデューサーとして、いかに面白い芝居を見つけるかという感性のしなやかさと、それを実行に移す能力が必要だ。質の良い戯曲を探すには、自分で読んで丹念に探すしかない。若い頃は年に二百本以上、今でも百本以上の戯曲を読むという。虚心坦懐で見知らぬ芝居に向き合い、砂漠の中で宝石を探すような作業を延々と続けられる力は、才能でもある。(本書「序にかえて」より抜粋)
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[BOOKデータベースより]
劇団つかこうへい事務所での盟友・風間杜夫、平田満との鼎談、共演歴40年の高畑淳子との対談をはじめ、加藤健一と芝居を創ってきた天宮良、綾田俊樹、上杉祥三、小田島恒志、熊谷真実、清水明彦、竹下景子、西山水木、畠中洋、一柳みるなどの仲間たちからのメッセージ、子息・加藤義宗、教え子・加藤忍へのインタビューも収録。
第一幕 所属俳優たった一人の事務所
[日販商品データベースより]第二幕 筆者が選ぶカトケン・ワールド
第三幕 加藤健一と話す、聴く
第四幕 旅日記『滝沢家の内乱』
第五幕 映像の仕事について
加藤健一。今年、令和七年(二〇二五)で役者生活五十五周年、事務所創立四十五周年の節目を迎えるという。私が彼の舞台を観始めたのは三十年と少し前のことになる。以来、すべてを見尽くしたわけではないが、かなりの数の舞台を観ている。演劇界での評価も高く、批評家としての私の評価も同様だ。今回、二つの「記念」が重なり、今までにこうした書籍が出ていないこともあり、一人の批評家が観てきた舞台や、本人との対話、共演者との座談など、さまざまな角度から「加藤健一」という役者(あえて俳優とは呼びたくない)を眺め、記録をすることにした。
十時間を超える対話や、過去の舞台を振り返り、自分で書いた劇評を読み、加藤が演じた戯曲を読み直した中で気づいたことがある。いろいろな意味で、加藤健一は、稀に見る「大いなる異端」ではないのか、ということだ。これまでの役者人生、演じた作品、演技論、物の考え方……。今までに何人かの役者論を書いてきたが、こうした感覚の持ち主には出会ったことがない。すべての考えに諸手を挙げて賛成というわけではないにしても、「なるほど……」と肯く部分も多かった。(中略)
加藤の事務所は特別で、「プロデューサー」「演出家」「俳優」の一人三役をこなしている。(中略)加藤の場合は、いろいろな事情で始めた「加藤健一事務所」の旗揚げ公演が一人芝居で、多くのスタッフを必要とせずにほとんど自前でこなしたこと、公演を打った劇場が定員七十人程度の小劇場だったこと、好評で黒字が出て、次へつなげられたことなどの幸運も手伝ったスタートだった。本人の獅子奮迅の努力と渾身の演技があってこそだが、失敗すれば無一文の可能性もあり、まさしく「神の見えざる手」の救いだったのだろう。加藤が持てるすべてを注ぎ込んだ公演に、演劇の女神が微笑んで、この世界で生きるチャンスを与えてくれたのだろう。それを次に活かせたのは、本人の才気であることは言うまでもない。
とはいえ、それ以降、年に三本から四本の芝居を自らのプロデュースで演じ続け、今までに百四十回を超えるプロデュース公演を行った例を、私はほかに知らない。(中略)
これだけの年数、回数を重ねるためには、ただ芝居が巧いだけでは成立しない。プロデューサーとして、いかに面白い芝居を見つけるかという感性のしなやかさと、それを実行に移す能力が必要だ。質の良い戯曲を探すには、自分で読んで丹念に探すしかない。若い頃は年に二百本以上、今でも百本以上の戯曲を読むという。虚心坦懐で見知らぬ芝居に向き合い、砂漠の中で宝石を探すような作業を延々と続けられる力は、才能でもある。
(本書「序にかえて」より抜粋)