- 忘れられた山原人と倭族
-
黒潮に浮かぶ古琉球史と日本古代史の解明
- 価格
- 2,200円(本体2,000円+税)
- 発行年月
- 2025年02月
- 判型
- 四六判
- ISBN
- 9784899824770
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[日販商品データベースより]
東シナ海は中国・琉球・日本の人と文化をむすぶ交流の場だった。
古琉球時代、海を利用して活発に活動した山原人がいた。
地形や出土品などからその繁栄を明らかにするとともに、
なぜ山原地域や奄美諸島が遅れた地域とされたのかを考察する。
●「はじめに」より(抜粋)
琉球王国といわれる以前の沖縄の歴史は、どんなものだったのか。また日本史の「記紀」(『古事記』『日本書紀』)が書かれた以前の歴史はどうだったのか。沖縄島には「元は今帰仁」という言葉が伝わる。沖縄近海から北上する黒潮がある。その黒潮に浮かんだ海人や交易者、派遣された使者、また国を追われた難民などがいた。この黒潮を舞台にした周辺の東アジア・東南アジアの島々を中心に、古琉球や日本古代の歴史を考える。日本史の研究は、いま大きな転換期に直面している。従来の日本史の「常識」や固定観念を打ち破り、新しい視座にたって真実の日本史像を再構築しようとする仕事が、次々に始まっている。このことは古琉球史にも言える。
(中略)
一九三一年久米村の旧家で発見された『歴代宝案』から、尚巴志によって、那覇を中心に海外交易が大きく展開されたことがわかってきた。海外への使者派遣などについては、仲北山系按司と尚巴志の関係を拙書(『古琉球史論』)で紹介したが、この山原の仲北山系按司たちが沖縄の海をどう対処し活動したかを検証し、尚巴志の海外交易発展につながったかを考えたい。
これまで「正史」を中心とした歴史観は、伊波普猷のいう山原は、狩猟民族で、交通の便も悪く、三山(『中山世鑑』に記された、一四世紀末から一五世紀初頭の頃の沖縄島を中山・北山・南山という三つの区域分け)でも北山・山原は最も遅れた地域であったと扱われた。
(中略)
そこには正史にそった中山中心史観がみられ、「元は今帰仁」という歴史認識はなく、古代から続く海洋民族としての交易を中心とした歴史観はみられない。日本本土にみられる「農耕の村から町へ」という歴史観である。伊波普猷の置かれた明治時代の近代国家設立という大きな流れの中では無理からぬことであった。近年では、これまでの歴史研究に対しての見直しが行われているのも事実である。
これまでの歴史学が全体として日本の社会の歴史の中で、海の果たした役割について、必ずしも十分に認識を深めてこなかったのではないか、そのために、日本の歴史像全体がかなりのゆがみを持つ結果になっている。
(中略)
このような海域世界の実態を明らかにするには、従来からのもう一つの潮流である「陸の歴史」を見直す必要がある。古琉球史においても「正史」(『中山世鑑』『中山世譜』等)に「陸の歴史」の視点からの記述や中山中心の歴史観がみられ、そしてそのことによって、「記紀」(『古事記』『日本書紀』)と同じように、歴史の呪縛がみられる。史料批判をすることによって、その歴史記述の意図を明らかにしたい。
最後に、海洋民族と琉球の民の源流として倭族について、その歴史を明らかにする。