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全ての特撮作品へのアンサー的作品。児童文学、児童小説としても古典となり得る名作。
特撮ヒーローに出てくる怪人が現実の世界に現れる、立場が逆転してヒーローをやっつける、そんな設定の物語はこれまでにもあったかもしれない。しかし本作で怪人たちが挑むのは、人間との共存である。怪人の子どもだって学校に行きたいと思うし、怪人だって平和に暮らしたり、選挙に出たいと思うかもしれない。そこに立ちふさがるのは、人間たちの不理解であり、現実の法律の壁である。怪人たちに人権はあるのか?そんなシミュレーションが行われている本作は、東映特撮ヒーローをモデルにしながらも、円谷プロのウルトラQ、ウルトラマンに近く、「空想特撮」を冠した意図が読み取れる。児童文学、児童小説として見ても、「創作物に命が宿る」「創作の世界からキャラクターが飛び出す(向こうの世界へ行く)」「人間たちの驕った行動により、蔑まれた者たちの怨念が蓄積するが、主人公の正しい行いによって正される」といった名作的要素が散りばめられており、古典の名作と勝負できる、古典になりうる作品だと考える。しかし何と言っても、本作を名作たらしめている最大の要因は、主人公ケロ太少年の、親を思う純粋な気持ちと頑張りであろう。ケロ太少年の本物の「正義」の心に、皆感動し、涙を流すはずである。この辺りは、著者もリスペクトしているという、東映特撮、円谷特撮の両方に関わった脚本家、上原正三節を受け継ぎながらも(子供向けSF特撮ファンタジー特有の「そんなバカな!?」と笑ってしまう展開含め)、見事に現代の社会問題をちりばめた、全ての特撮作品のアンサー作品となっていると評する事ができる。色眼鏡で見ることなく、ぜひ一度お手にとって頂きたい作品である。