- 災害報道とリアリティ
-
情報学の新たな地平
- 価格
- 2,860円(本体2,600円+税)
- 発行年月
- 2022年02月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784873547473
[BOOKデータベースより]
ひとりでも多くの命を守りたい…。災害報道の現場を熟知する著者が渾身の力を込めて執筆した実務と理論を架橋する待望の1冊。
災害報道研究をひらく
第1部 災害報道研究の理論(災害報道の定義;災害報道研究史を概観する ほか)
第2部 災害報道の局面別の再検討(緊急報道の分析;復興報道の分析 ほか)
第3部 理論と実践の往還(実践事例1:災害報道版クロスロード;実践事例2:早期避難の呼びかけ―広島モデル ほか)
第4部 到達点からの展望(COVID‐19とインフォデミック)
リアリティのリアリティ
報道の危機が叫ばれて久しい。そうしたなかで災害報道も苦境に瀕している。被災の現実を迅速に伝えようとしても、逆に被災者に迷惑をかけてしまう事態がネットにさらされ、「マスゴミ」と揶揄される始末である。情報の伝え手と受け手の信頼関係が底抜けしている。徒労感や閉塞感が充満している。情報テクノロジーが高度化すればするほど、情報空間は貧しくなってきているとさえいえる。
こうした事態を真摯に受け止めるとき、これまでに何度も議論の俎上に載せられてきた「災害報道のベターメント」の問題に関して、解決に向けたあらたな一歩を踏み出すためには、虚心坦懐に理論の立脚点を問いなおしたり、実践上のアプローチを替えてみたりすることが求められるのではないか。これが、本書の核となる問題意識である。
満身創痍の災害報道に対する処方には、特効薬はない。しかしだからといって、場当たり的な対症療法に終始するのではなく、根本治癒を目指したものでなければならない。
そこで本書では、まず「情報」の特性を再定義して、コミュニケーションモデルを描き直し、リアリティの水準から論を興す、新たな地平に立つことにした。人々の命を救う緊急報道、人々の命を支える復興報道、人々の命を守る予防報道の三局面に関して、災害報道のありかたをトータルにまなざす視座を確立しようとしている。
そのねらいは、本書の構成を外観すれば容易に理解されるであろう。第T部は、理論編。情報学の観点から、本書のキーコンセプトであるリアリティとは何なのか説明している。第U部は、分析編。第T部で抉出したセオリーで、現況の災害報道の課題点を再整理してみせる。そして第V部は、実践編。空理空論を言い放しにするのではなく、筆者自身が尽力しているプロジェクトを例に、「災害報道のベターメント」の勘所を探索している。理論と実践を往還すること。理論を実践で鍛え上げ、実践を理論で彫琢すること。これこそがいま、問題解決型のアカデミズムにおいてもジャーナリズムにおいても求められている。
自然災害・社会災害が頻発する現代社会において、災害報道をめぐる根本問題にメスを入れることは、すでに待ったなしの状況にある。ただしそこで、短絡した発想を持ちこんで事態の上書き・上塗りをするのであれば、かえって混乱の渦を激しくする逆機能を起こすにちがいない。大胆に、かつ冷静に。「災害報道学」(Disaster Journlism)の礎石となることを目指した待望の書が、ようやく世に放たれる。
この商品をご覧のお客様は、こんな商品もチェックしています。
- 津山三十人殺し 最終報告書
-
価格:3,960円(本体3,600円+税)
【2024年11月発売】
- 1兆円を盗んだ男
-
価格:2,200円(本体2,000円+税)
【2024年06月発売】
- 災害情報学の挑戦
-
価格:3,630円(本体3,300円+税)
【2024年12月発売】