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- クリスタルの心
-
ルネサンスにおける愛の談論、詩、そして肖像画
ありな書房
リナ・ボルツォーニ 伊藤博明 足達薫 金山弘昌
- 価格
- 8,800円(本体8,000円+税)
- 発行年月
- 2017年11月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784756617576
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[BOOKデータベースより]
詩/ベンボによって詠われ、絵/レオナルドによって表わされたルネサンスの愛とは、霊魂の中に描かれた「印形」であった。言葉と詩が喚起し、魂が創出する、めくるめくイメージを、鏡の魔力に委ねられた二重肖像画に、連想と追憶の魅惑的な遊戯的作用を通して、愛というクリスタルな遊戯的表象を召還する!
第1部 『アーゾロの談論』―テーマ、遠近法の遊戯的作用、生の選択(三人の乙女たち―冒頭の場面とその回析;宮廷とその肖像画;文学とその受容者;イメージ;場所;隠者とウェヌスの領国の間で)
[日販商品データベースより]第2部 肖像画―言葉とイメージの間で(「観者の眼」の前のテクスト;自画像;詩と肖像画―境界のかけひき)
第3部 二重肖像(詩における二重肖像―アリオストとカスティリオーネ;覆いの絵のある、または背面に絵のある肖像画、あるいは二幕仕立ての肖像画;心の空間)
第4部 友人たちの共同体(シャルル剛胆王の宮廷からロレンツォ・デ・メディチのフィレンツェにかけてのベルナルド・ベンボ;ベルナルド、ジネヴラ・デ・ベンチ、そして友人たちのサークル―神話の構築、解釈の悦び;徳と名誉―称賛と記憶の間におけるインプレーサの変身;メダルの官能的快楽、あるいはメダル争奪戦;『アーゾロの談論』のための二重肖像画)
現在、ピサ高等師範学校正教授としてイタリア文学を講じている、著者のリナ・ボルツォーノの声価を一躍高めたのは、一九九五年に刊行された『記憶の部屋──印刷時代の文学的‐図像学的モデル』(足達薫・伊藤博明訳、ありな書房、二〇〇七年)である。この著作で彼女は、ギリシア・ローマ時代に端を発する修辞学の西洋的伝統と結びついて存続してきた記憶術が、教訓的な意味や信仰上の含意を帯びながら再興した一六世紀のテクストを渉猟して、当時の記憶術にかかわるさまざまな実践の様態を明らかにした。
『記憶の部屋』においては、テクストとイメージの両方にかかわる、系統樹・図表・系統図などの「概念図」の利用について特別な意義が強調されていた。続いてボルツォーニは、この考察を中世末期の写本、および壁画や板絵をめぐっておこない、テクストとイメージに共通するロジックとそれらの相互作用による所産を考究しつつ、さらに、テクストとイメージを自らの中で構成する「語り」の存在(説教師のパフォーマンス)を解読して、二〇〇二年に『イメージの網──起源からシエナの聖ベルナルディーノまでの俗語による説教』(石井朗・伊藤博明・大歳剛史訳、ありな書房、二〇一〇年)を上梓した。
そののちボルツォーニは、ルネサンスの文学的テクストと絵画の関連について、とりわけ、同時代の作家と肖像画との密接な結びつきについて研究し、その成果は二〇〇八年刊行の『ルネサンスにおける詩と肖像画』として発表された。この書物は、短いが、きわめて濃密な序論をそなえた、ルネサンスの肖像画とそれに関連する文学的テクストとのアンソロジーである。
ある意味では、『クリスタルの心』はこの書物の内容を発展させたもので、すでに特別の関心をよせて言及されていた対象である、愛へと献げられた詩と肖像画の分析を深化させ、これら二つのジャンルに共存する、愛する者の心の内的な秘密に、すなわちルネサンス人の魂の内奥に肉薄しようとしている。ボルツォーニは、詩人と芸術家が創出しようとした、完全な内的透明性−−「クリスタルの心」−−という理念によって織りなされた、複雑で洗練された多義性を、二重化されるアイデンティティ、さまざまな文学的・芸術的枠組み、自己のナルシスティックな鏡映を隠蔽する種々の仮面の読解を通して明らかにする。