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[日販商品データベースより]
「なぜ自分はこんなにながいあいだ、サバにこだわりつづけているのか。二十年前の六月の夜、息をひきとった夫の記憶を、彼といっしょに読んだこの詩人にいまもまだ重ねようとしているのか」(須賀敦子「トリエステの坂道」)。
イタリアの辺境トリエステに生きた20世紀屈指の詩人サバ、そのはじめての邦訳詩集である。全詩集『カンツォニエーレ』をつねに傍らに置いていた訳者は、自身のエッセーにもときおり、この詩人の一節を引用した。「閉じこもった悲しみの日々にわたしが/自分を映してみる一本の道がある」。
そしていま、ゆっくりと日本語に移された詩作品68篇が一冊の本となった。前期の代表作『トリエステとひとりの女』『愛ゆえの棘』、物語のような詩集『自伝』から、晩年の『地中海』の絶唱まで、ここに選ばれたどの一篇をとっても、この詩人と翻訳者のたぐいまれな出会いを明かすものであり、読む者に慰めと歓びを与えてくれるだろう。