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[BOOKデータベースより]
1章 大陸・巡礼(秋天の悲しきまでに白き雲;二〇三高地さざんか揺らす風;乃木坂の思はぬ蟇に逢ひにけり;秋風の僅か流るる盧溝橋;伏牛の辺より白蝶翔ちにけり;西日照る七三一の部隊跡;風激しくなる大連の夕焼雲;虹立ちぬライオンのはく水の弦;しぐるるや寝釈迦の前の一兵卒;ひっそりと赤の広場の春の雨;鳥追の布残されし刈田かな;残照の果てなかりけりうろこ雲;遠雷淋しき時に鳴りにけり)
[日販商品データベースより]2章 太平洋諸島・巡礼(拳強く握る真夏の真珠湾;バンザイ岬海上に湧く雲の峰;夏草やモンテンルパの観世音;水牢をのぞき込みたる暑さかな;夏の海光るマゼラン上陸地;白き蝶舞ふ司令部の廃墟跡;炎天覆ふ千のこうもり乱舞して;涼しさや椰子の葉先の昼の月)
3章 東京・広島・長崎・巡礼(飛行雲夏草の果て暮れ残る;亡き父の真意に気付く今日の花;灯消し正座して聞く花火音;蜻蛉や水草揺るるままにゐて;逝く夏やB29の滑走路;天空に機影消えゆく原爆忌;陽を浴びてゐる半眼の雨蛙)
4章 特攻兵士・巡礼(天炎えて特攻の碑の影深し;白雲の映るがわびし夏の川;海に向く特攻の碑や寒雀;人間魚雷錆びひとひらの山桜;逃げ水や霞ケ浦に浮く帆船)
5章 沖縄・巡礼(海原の沖へ沖へと白き蝶;秋の空墓石声なく群がりて;激戦の跡紫のすみれ草;獅子を誘ふに似て黄水仙;とかげの子瞬時石垣に隠れたる;炎上の幻に似てももたまひ;はまゆうや掌にある星の砂;春月と波打ち際を歩みけり;流れ星いくつ流るる喜屋武岬;小船漕ぐ人新樹光あふれゐて;遠雷や死なばなりたき夕暮色)
6章 戦後・巡礼(藁馬に水を供へる敗戦日;一枚を文庫にはさむ渓紅葉;消防車幾台通る雪の夜半;色なき風白衣の人の会釈して;若夏や江田島に寄る波の音;甘薯煮て坊ちゃんの清に似たるかな;良寛の修行跡とや遅桜;背鏡で帯結びゐる終戦日;春灯嫁ぐ前夜の寝顔かな;うぐいすや太古を語る要石;遠峰晴首立てて鳴く鶴の恋;遠き日やビルの谷間の夏の月;誰が魂と知らねど今朝の白桔梗;指軽く結び秋風通しけり)
長い年月をかけ、戦で逝った人々を偲びながら、多くの戦跡を訪ねてきた著者。本書は、各地を巡礼した時に詠んだ俳句に、読みやすい短い文章を付けてまとめた慰霊と鎮魂の書。