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[BOOKデータベースより]
イプセンの「民衆の敵」はエンターテイメントとして申し分なく、コメディとして最高で、人間ドラマとして一級で、なおかつ政治劇、社会ドラマとしても極めて深く、本質的である。人間の愚かさ、醜さ、いい加減さをあますことなく描き尽くし、なおかつ突き放していない。そしてそのどうしようもなさからこぼれおちるのは、人間という生き物の魅力である。生きているということは、嘘をつき、間違いを犯し、罪を犯し続けることだ。イプセンはそのことを厳しく断罪しながら、少しも否定はしていない。強く告発しながら、容認してもいるのだ。