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[BOOKデータベースより]
本書は、早稲田大学文学研究科に提出した学位請求論文「寛政改革期の都市政策―江戸の米価安定と飯米確保」(1999年6月8日、課程博士(文学、早稲田大学)取得)に修正・加筆し刊行するものである。大原騒動の一方の当事者である飛騨郡代大原亀五郎は、寛政改革において断行された幕領代官に対する一連の粛正策に基づき、その施政を問われて遠島に処されたが、この問題を報告で取り上げたことを契機に、著者は寛政改革に関心を持ち、修士論文のテーマにすることとした。天明期の緊迫した社会情勢を鎮静化させるために、松平定信を首班とする幕閣が遂行した施策を検討したのであるが、具体的には一揆禁令の発令や町会所の設置問題を取り上げた。博士課程に進んだのちは、修士論文の内容を膨らませて、本書のとおり論文を発表したが、修士論文では、一揆・打ちこわしの原因となった米価高騰の状況について指摘することはあったものの、米穀市場政策自体を分析対象に据えることはできなかった。よって、博士論文の作成においては、当該政策の分析にも重点を置いた。本書では米価(食糧)問題を素材として、江戸をいわばマクロの視点で捉えている。
第1部 江戸打ちこわしと一揆禁圧(江戸打ちこわし前夜の社会状況;江戸打ちこわしと幕閣内の政争;酒造制限令をめぐる一揆)
第2部 江戸米穀市場政策の展開(酒造制限の地域性と米穀融通の活性化;江戸下り酒の入津制限)
第3部 江戸における備荒貯穀法の整備と展開(江戸町法改正;七分積金の導入;江戸町会所の救済活動における名主・家主の不正 ほか)