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[BOOKデータベースより]
実の父から性虐待を受けて育った。そのことを告白するには、長い時間が必要だった。記憶が意識から切り離され、自分の被害を思い出せなかった時間…。つらすぎる記憶に、恐れ、とまどい、逃げ回り、葛藤した時間…。それでも、そのすさまじい暴力を「なかったこと」にはできなかった。同性カップルの結婚式で話題の著者による衝撃の書。
第1章 タカラジェンヌに憧れて(東さんのお嬢さん;同性愛;憧れの宝塚音楽学校)
第2章 タカラヅカの「暴力」(被害者の私;すみれ寮からの脱走;加害者の私;初舞台、そして退団)
第3章 薬物依存の混沌のなかで(オーバードーズ;自殺未遂と閉鎖病棟;父の死)
第4章 父から受けた性虐待(出会い;忌まわしい記憶;なかったことにする;カウンセリング;「さもありなん」;父への手紙)
第5章 私はいま、生きている(ディズニーシー・ウェディング;春一番の祝福;ひろこさんと私の新婚ライフ;LGBTってなんだろう?;台北にて)
2010年、芸名と自身がレズビアンであることをカミングアウトし、2013年には東京ディズニーリゾートで、初の同性カップルによる結婚式を挙げ話題になった、元タカラジェンヌの著者による渾身の書き下ろし作品。実父から性虐待を受けていたという事実を初めて明らかにすることで、この世の中がだれにとっても生きやすいものになるための一助に、本書がなればと願っています。
2010年、芸名と自身がレズビアンであることをカミングアウトし、2013年には東京ディズニーリゾートで、初の同性カップルによる結婚式を挙げ話題になった、元タカラジェンヌの著者による渾身の書き下ろし作品。本書を書いた動機を知っていただくために、まずは「まえがき」をお読みください。
――私は実の父から性虐待を受けて育った。
そのことをこうして告白するには、長い時間が必要だった。
記憶が意識から切り離され、自分の被害を思い出せなかった時間……。つらすぎる記憶に、恐れ、とまどい、逃げ回り、葛藤した時間……。
それでも私は、私が受けたすさまじい暴力を「なかったこと」にはできなかった。
自分の被害体験を思い出し、性虐待について学んでいくにつれ、近親者による性虐待は、私が想像するよりもずっと多いということを知った。けれど世間は、それを「なかったこと」にしたいのか、その実態にふたをしたままにしている。そんな現状を知ればしるほど、「暴力」と「否認」はとても密接な関係にあると実感するようになった。
私は、今の日本に生きる、レズビアンの女性だ。
そして、実父による性虐待から生きのび、立ち上がろうとするサバイバーだ。
どちらも、今の社会では生きづらい存在なのだろう。だけど私は、私でいることをやめられない。私は、私自身を「なかったこと」にはできない。
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランズジェンダー)の人や、性虐待の被害を受けている人が、何に苦しんでいるのか、何が不安なのか、書くべきことはたくさんあるような気がする。でも私は、レズビアンの代表でも、サバイバーの代表でもない。私にできることは、私の体験を私の言葉で伝えることだけだ。
この本には、幼い日にお風呂場で奪われた「私の生きる力」を取り戻すために書いたものという側面があるだろう。本を書くことが、私の回復のプロセスのたいせつな一部になるのかもしれない。けれども、それだけでなく、もし私のこの告白が、生きづらさを抱えるだれかの胸に届いたとしたら、それは著者としてとてもうれしいことだ。そんな祈りを込めて、私が生きてきたこれまでのことを書いてみたい。――
この世の中がだれにとっても生きやすいものになるための一助に、本書がなればと願っています。
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2010年、芸名と自身がレズビアンであることをカミングアウトし、2013年には東京ディズニーリゾートで、初の同性カップルによる結婚式を挙げ話題になった著者による、衝撃の書き下ろし作品。
2012年7月に発表された「電通総研LGBT調査」によれば、日本人の5.2パーセントがLGBD(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)です。およそ600万人の日本人が、なんらかの性的な生きづらさを抱えながら生きていると言えるのかもしれない。元タカラジェンヌの著者は、レズビアンであることをカミングアウトして講演などの活動を続けてきた。けれど、著者にはもうひとつ、生きづらさの原因があった。実父から性虐待を受けていたという事実だ。そのことが原因で、自殺未遂を繰り返すなど凄惨な人生を歩んできたのだが、レズビアンであること、同性婚のことなど、自身の体験を紹介する機会が増えるにつれ、性虐待に触れずにすませるのは不誠実だと考えるようになった。
そんな思いが、東さんを本書『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』の執筆に向かわせた。私の告白が、生きづらさを抱えているだれかの胸に届いたらうれしい――。著者のそんな決意を読みとってほしい。