2014年 7月号
新野剛志
自宅から程近いワンルームが仕事場。週刊誌を含む3本の連載を抱え、日々のほぼ7割をこの部屋で過ごす。「週末は、家に帰ると小学生になったばかりの息子とつい遊んでしまう」と、泊まり込むこともある。執筆に追われる仕事漬けの毎日だ。
この部屋を構えて5年、「まったく荷物が増えていない」という室内は、仕事関連の物だけですっきりと整えられている。ダークブラウンを基調にアンティークの家具がさりげなく置かれ、落ち着いた雰囲気が漂う。
『あぽわずらい』は、ツアー会社の成田空港所を舞台に、遠藤慶太が旅客サービスのプロ「あぽやん」として奔走するシリーズ第3弾。親会社が破綻し、現場の今後を思い悩む遠藤が、出社拒否の状態に。今作はおなじみのメンバーが交代で語り手を務め、遠藤の復帰までを描く連作短編集。オフィスの仲間に囲まれながら、各々が自らの悩みと向き合い、自力で前へと歩き出す。「その過程を楽しんでいただけたら」。シリーズ未読でも満足間違いなしの、ほろ苦くも清々しい1冊だ。
「朝の気分とスタートダッシュでその日の成果が決まってしまう」ため、朝は自らのエンジンをかける大切な時間。自宅と仕事場を行き来するだけの日も、愛用の鞄を持って“出勤”してくる。作品の構想は「100%喫茶店で」。編集者との打ち合わせも行きつけの店で行うが、執筆中は専らコンビニのコーヒーを愛飲中。特に気分転換は必要としないが、「何もしないと痩せてしまう体質」の新野さん。10キロのダンベルを左右に一つずつ持ってのトレーニングが唯一の運動だそう。
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年7月号より)