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著者とその本

今月の作品

陽炎の門
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春風伝
春風伝
長州藩士・高杉晋作。彼が欧米列強に蹂躙される上海の姿に日本の未来を見た時、「レボリューション」の天命は下った…。詩と女を愛し、敵をも魅了した英傑の奇策に富んだ嵐の生涯。満を持して世に送る本格歴史長編。
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橘花抄
橘花抄
両親を亡くした卯乃は、筑前黒田藩で権勢を振るう立花重根に引き取られたが、父の自害に重根が関与したと聞き、懊悩のあまり失明してしまう。前藩主の没後、粛清が始まった。減封、閉門、配流。立花一族は従容として苦境を受け入れるが追及は苛烈を極め、重根と弟・峯均に隻腕の剣士・津田天馬の凶刃が迫る。己の信ずる道を貫く男、そして一途に生きる女。清新清冽な本格時代小説。
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2013年 7月号
葉室 麟さん 『陽炎の門』

「人生の宿題に自分なりの解答を与えてみたい」─そんな思いで執筆した作品だという。

「この齢になると友達の大半も定年退職を迎え、会社員人生を振り返ることが多くなりました。組織では皆、誰かを押しのけたり裏切ったり、リストラや望まない配転をさせた経験もあります。あのときの判断は正しかったのか、相手を傷つけてしまったのではないか。その気持ちがどこか後ろめたさになっている。私自身にもそれが人生の宿題として残っていると最近特に思うようになったんです」

豊後・黒島藩で三十七歳の若さにして執政に昇進した桐谷主水。職務において冷徹非情、あだ名は〈氷柱の主水〉。派閥抗争で親友・芳村綱四郎を陥れて地位を得たと囁かれている。年若い妻・由布は綱四郎の娘だった。由布の弟・喬之助が仇討ちに現れたとき、十年前に綱四郎を切腹に追いやった事件が再び動き始める。綱四郎を己の手で介錯し、今も夢にうなされる主水は思い惑う。自分は親友を無実の罪で死なせたのか─。

「主水は決して罪なき人ではない。だが、それはどれほどの罪なのか。彼は苦境にどう挑むのか」。そこから発した本作には、多くの葉室作品に見られる「清廉潔白な主人公」「心温まる物語」の要素はない。その意味では異色作といえる。出世争い、派閥の対立、理不尽に対して声を上げられない空気……自分が属する組織と重ねる読者も多いだろう。企業社会が抱える矛盾、その中で自分を殺して生きねばならないことへの憤りを伏流に、組織人としての一つの生き方を、著者は主水に託した。

「主水はいわば自分の仕事を全うしただけ。ところが人生の罠のように、それが罪だったかも知れないという状況に直面するわけです。よく思うのですが、生きていれば誰でも一度は過ちを犯す。子どもの頃は無垢であっても、成長の過程ではどこかで挫折や失敗を経験し、何らかの罪を犯すことはある。しかし、そこからその人の人生は始まるのだと思います。傷にどう対峙するかで、人生の深みや高さは決まっていくのだろうと」

主水は藩主に向かって言い放つ。〈それがしは不義不忠の悪臣である〉。「自分が世の中の価値観で否定されるのではなく、自分の価値は自分で決める。そうありたいと思います。この場面は書き始めたときに既に決めていて、どれだけ確信を持って主水が言い切れるか、書いていく中でいろいろ考えた。そんな作品です」

自身が推理小説好きという葉室麟さんの歴史時代小説は、ミステリー的趣向を帯びることが多い。今作は特にそれが色濃い。 「ミステリーの中でも私が好きなのは、犯罪のテクニックや仕掛けよりも人間性によって一瞬でどんでん返しになるというタイプ。それを書くために、今回は最初から謎を仕掛けました」

登場人物たちの謎が明らかになるとき、読者が目の当たりにするのは、人間の醜さ、哀しさ、そして「人が生きていく上で大切な何か」である。

(日販発行:月刊「新刊展望」2013年7月号より)

今月の作品

陽炎の門
陽炎の門
職務において冷徹非情、若くして執政の座に昇った桐谷主水。かつて派閥抗争で親友を裏切り、今の地位を得たと囁かれている。友を陥れてまで、己は出世を望んだのか。最上の哀切と感動が押し寄せる著者最高傑作。
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プロフィール

葉室 麟
葉室 麟
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業。地方紙記者などを経て、2005年「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞。2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞。著書多数。近著に『星火瞬く』『冬姫』『無双の花』『散り椿』『霖雨』『千鳥舞う』『この君なくば』『螢草』『おもかげ橋』『春風伝』等。

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新刊展望 7月号
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【今月の主な内容】
[まえがき あとがき] 仁木英之 隠れる、ということ
[特集] 日本経済を小説で学ぶ 幸田真音/堺 憲一
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螢草
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菜々は武家の娘から女中に身を落としても、いつも元気よく朗らかで、心に一点の曇りもない。前を向いてゆく。切腹した父の無念を晴らすという悲願を胸に抱えながら…。「爽快&軽快」時代エンターテインメント。
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