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特集・対談

著者関連商品

天佑なり 上
天佑なり 上
足軽の家に養子となった少年、のちの高橋是清は、英語を学び、渡米。奴隷として売られる体験もしつつ、帰国後は様々な職に就く。生来の勉強家は、不世出の銀行家へと成長する…。日本経済の救世主の熱き生涯を描く。
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天佑なり 下
天佑なり 下
日露戦争の戦費調達を命じられた高橋是清は、ロンドンで日本国債を売り出し、英語力と人脈を駆使して成功を収める。蔵相、首相をも歴任、金融恐慌の鎮静化にも尽力するが、経済を破壊する軍国主義の波が押し寄せ…
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日本国債 上
日本国債 上
日本国債のディーラーが遭った不審な交通事故。直属の部下・朝倉多希が任された翌週の入札で異常事態が発生した。未達―国の募集総額に対し応札額が大幅に不足。「この国が破産する」未曽有の危機の背後には壮大な罠が。膨大な取材と卓越した視点が冴える迫真の経済小説。最新データによる待望の改訂版。
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日本国債 上  オリジナル版
日本国債 上  オリジナル版
外資系証券会社で日本国債のディーラーに抜擢された朝倉多希は、初入札で“未達”という未曾有の異常事態に巻込まれる。未達とは応札額が足りず国債が発行に至らぬこと。このまま国は破産に向かうのか?なぜ、未達は起きたのか?戸惑う多希は、自らの応札価格が何者かに書き換えられていたことを知る。国債をめぐる問題点が生々しく散りばめられながら、ヒロイン多希とインターネット上で繋がる個性的なディーラーたち、政界官界の人物がかかわりあって物語は思わぬ方向へ。著者の名を不動のものにした傑作経済小説が、オリジナル版で初の文庫化。
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Hello,CEO.
Hello,CEO.
外資系クレジットカード会社で働く27歳の藤崎翔は、大規模なリストラ計画のため信頼する上司たちが解雇されることを知る。翔も退職を決め、彼らと一緒にベンチャー企業を起ち上げるが、最年少ながら、なんと社長に選ばれてしまう。夢をみずからの手で引き寄せるために、新しいビジネス・モデルを模索する翔と仲間たち。果たして新会社の行方は?読めば元気が湧いてくる!すべての働く若者たちへ贈る、青春熱血起業小説。
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舶来屋
舶来屋
闇市から出発し、エルメス、グッチ、セリーヌ、エトロ…数々の一流品を日本に紹介した銀座の高級ブティック「サンモトヤマ」。その創業者・茂登山長市郎は戦時中に天津で出会った西洋の逸品の買い付けに奔走する。パリやフィレンツェの老舗で何度門前払いされても挫けず、そして出会った幸運。日本人の逞しさ、美しい物への愛、商人の矜持を鮮やかに描いた、痛快で心にしみる一代記。
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2013年 7月号

【特集】 日本経済を小説で学ぶ

日本経済活性化への期待を込めて、今こそ読みたい経済小説をピックアップしました。

[インタビュー] 幸田真音さん │ 三橋貴明著『コレキヨの恋文』

【インタビュー】 幸田真音さん 『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』
世界恐慌から日本経済を救った人、是清。

幸田真音 Main Kohda
1951年滋賀県生まれ。米国系銀行の債券ディーラーなどを経て、95年『小説 ヘッジファンド』で作家デビュー。2000年に発表した『日本国債』は日本の財政問題に警鐘を鳴らした作品としてベストセラーになり、多くの海外メディアからも注目を浴びた。テレビやラジオでも活躍。政府税制調査会、財務省・財政制度等審議会、国土交通省・交通政策審議会、NHK経営委員会の各委員など公職も歴任。『凛冽の宙』『代行返上』『あきんど 絹屋半兵衛』『タックス・シェルター』『Hello,CEO.』『周極星』『バイアウト』『舶来屋』『財務省の階段』『ランウェイ』他著書多数。

わが国の景気回復に向けて期待を集める「アベノミクス」。この経済政策を進める上で模範とされた人物がいる。高橋是清――二・二六事件の凶弾に倒れた大蔵大臣。20世紀初頭に日銀総裁、7度の大蔵大臣、首相も歴任した財政家である。幾度も日本の財政危機を救ったその功績は、現在も学ぶべきところの多い偉大なる先例だ。
その波瀾万丈の生涯を描いた歴史経済小説『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』がこのほど刊行された。国際金融の場で活躍した自身の経験も生かし、多数の経済小説を発表してきた幸田真音さんの宿願の一作である。本作への思いを語っていただいた。

百年前に日本国債を売った人

―安倍政権が「高橋財政」をモデルに掲げたことで高橋是清という人物は昨今注目されているわけですが、幸田さんがこの小説の執筆を始められたのはそれよりずいぶん前ですね。

幸田  2011年から地方新聞7紙で連載したものです。サブタイトルを「高橋是清・百年前の日本国債」としましたが、これは10年くらい前から「いつか書かなければ」と思っていたテーマなんです。

私は作家デビューから18年になりますが、2000年に書いた7作目の小説『日本国債』で大きな反響をいただきました。以来、日本の国債市場、日本の財政問題は自分のライフワークだと思って、いろいろな形で関わってきています。10年ほど前、財務大臣の諮問機関である「財政制度等審議会」で7年間、委員を務めさせていただきました。当時、日本国債の95%以上は日本人が買い支えていた。しかし今後は海外に国債を売っていこうという動きがあり、財務省が海外に向けて国債のIR活動を始めたんです。そのとき、「こんなふうに国債を海外で売るのは、高橋是清が日露戦争の戦費調達で行って以来のことだ」とおっしゃった方がいて。それが高橋是清との出会いとなりました。

今から約100年も前の明治、日露戦争の時代に海外で国債を売るというのはどんなことだったのか。誰にどうやって売ったのか。そもそも、基軸通貨が英国ポンドであった当時の国際金融市場の仕組みはどんなものだったのか。ロンドンでは諸外国の国債が売買されていたのか。そういうことをきちんと調べてみたいと思ったのがきっかけだったんです。高橋是清と100年前の日本国債のことをいつかきっと書こう、そう思いました。

それで資料を集めて準備していたときに新聞小説のお話をいただきました。地方七紙ということで、地方経済の疲弊、日本の借金問題の今後も含めて、多くの方に読んでいただきたい。そうして書き始めたのが『天佑なり』です。

今に生きる是清の言葉

―近代歴史小説としてもたいへんおもしろかったです。

幸田  江戸時代となると今生きている我々日本人にとっては少し距離感がありますが、明治・大正・昭和はまだ生々しいですよね。私は是清のお孫さんに会ってお話を聞いたこともあって、「是清はまだ生きている」「これは今の話だ」と思えるような瞬間もありました。

それに、是清の時代と現在の日本の状況はとても似ています。いくつもの共通点があるんです。関東大震災と東日本大震災。ニューヨーク発の世界大恐慌と、経済の規模は違うけれどサブプライムローン問題やリーマン・ショック、世界金融危機。国の借金の問題もそうです。日本は、幕末から明治維新のコストも含めてずっと借金と戦ってきた国ですから。そんな状況に是清はどう立ち向かったのか。

是清はいろいろな示唆に富んだ発言をしています。国会で、あるいは国を代表して世界に向けて。金融、金利、消費拡大などについての提言は公的な記録にもたくさん残っています。驚くのは、一般の人にもわかるような言葉で話されていること。随想録や講演録、聞き書きの自叙伝が残されていて、小説の中ではそれらの言葉を是清に語らせていますが、まさに現代の我々こそがそうすべき、みたいなことが驚くほどあるんです。是清があたかも私の筆を通して今の日本人に言おうとしているのではないかと錯覚するほどでした。

あの時代の日本人がここまで世界経済を理解し、財政に対してこういう発想ができたのはすごいと思います。不思議なくらい、全然古くない。逆に言えば、日本人は同じ問題を繰り返して、進化していないのか……。私自身も新しい発見がたくさんありました。

―財政や金融に関わる是清の業績を詳しく、わかりやすく解説しながら物語に誘ってくれるのは、幸田さんの作品ならではだと思います。そして一方で、「人間・高橋是清」を活写されているのが、この小説の大きな魅力でもあります。庶子として生まれ、仙台藩足軽の養子となり、横浜で英語を学んで渡米。苦学して帰国の後は実に様々な職を転々とし、失敗も重ねて……。その波瀾万丈ぶりに驚きながら、読み進めるにつれてどんどん立体的に現れてくる是清像にとても惹かれました。

幸田  書いていく中でいちばん悩んだのは、「何を書かないか」。あまりにも豊かな人生で、エピソードがものすごくたくさんあって。失敗の連続ではあるけれど、本当にいろいろな経験をしている。1年2か月の新聞連載、本にして上下巻2冊という枠の中で書き切るために何を省くか、困りました。そのぐらいおもしろい人だったんです。

是清がすごいのは、自分が苦労して得た権力や立場や収入を、他人のため、仕事のため、志のためにいとも簡単になげうってしまうこと。たとえば17歳のとき、友達の借金のために恋人と別れて九州の唐津に行き、英学校を創りますが、借金の返済が終わったら月給の減額をみずから申し出て、「その分は学校のために使えばいい」とやってしまう。また30代の頃、ゼロから特許局を立ち上げ、初代局長に就いていたにもかかわらず、自分以外に行く人がいないからと銀鉱事業で南米ペルーへ。結局、廃坑の後処理をさせられ、そのために家財をほとんど処分して、裸一貫になってしまいます。そのとき是清らしいと思ったのは、私邸を売り払って部下たちにお金を分け与えた後、粗末な長屋に引っ越しますが、それが元のお屋敷のすぐ裏。家族は近所づきあいもあって恥ずかしがったけれど、是清は全然気にすることなく「勝手がわかっていいじゃないか」。これは是清のお孫さんから実際にうかがったお話です。そういう、ものにこだわらない人だったんですね。私利私欲がなく、信念のためには自分が持っているものを平気で手放す。人間としてすごいなと思います。

「富国強兵」と言われた時代に「富国裕民」を説いた人です。国のため、民のために何が大事かを常に考えていた、無私の人。だからこそ何かあったときには力を貸してくれる人が現れたのだと思います。

我々は何をすべきか

―是清の生涯に私たちが学ぶべきことは多いですね。

幸田  是清が最後に何をしたのか、何ができなかったのか。この小説から少しでもヒントみたいなものを読み取っていただければうれしいです。明治・大正・昭和と日本が近代化の道を歩み、海外の情報やシステムをどんどん取り入れて国力をつけてきた時代にこういう出来事があった、こういう人がいたと知ることは意味があると思うし、何をすべきか、何をしてはいけないのかを私たちは歴史の中から学ぶことができます。戦争を繰り返してはならない――第二次世界大戦に向かって日本が転がり落ちていく過程に実際何があったのか、是清の人生を辿ることで経済面から理解できると思うんです。それは最終章でしっかり伝えたかったことです。

―タイトルにある「天佑」とは「天のご加護」の意味。日露戦争の戦費調達のためロンドンでの国債売り出しに成功したときに是清自身が発した言葉なんですね。

幸田  自伝の中で見つけました。当時の日本は欧米列強にとっては極東の小国。どんな国かも認識されていなかったような状態です。そんな中で2億もの国債発行をしなければならない。日露戦争に突入したものの外貨準備高は底を尽き、早急の外債募集の命を受けて、是清はまずアメリカへと発ちます。そこで「同情とポケットは別だ」と言われて、「でもやるしかない」とロンドンに渡り、いくつかの出会いも経て、苦労して苦労して、努力によって成功を勝ち取るわけです。普通ならそこで「自分が頑張ったから成功した」と言いたいじゃないですか。でも是清は「天佑なり」、運が良かったのだと。それをさらっと言えてしまう。まさにこの人の象徴的な言葉だと思いました。

今の日本でも、それぞれの立場で大変な思いをしている人はたくさんいらっしゃるはずです。「もうだめだ」「八方ふさがりだ」「○○のせいだ」「社会が悪いからだ」と言うのは簡単。でも、「何とかなる」「自分の力で乗り越える」と一所懸命困難に立ち向かっていく人には、天佑は必ずもたらされるものだと思うんです。「頑張れば天は恵みを与えてくれる」と信じることの強さ。それは是清の人生そのものです。

何よりも、私が高橋是清と出会えたこと自体が天佑だと今思っています。日本中、世界中に天佑が来ますように。そんな思いも込めて、このタイトルを付けました。

高橋是清は、一貫した志、揺るぎない信念の、本当に魅力的な人です。かつての日本にこんな人物がいたことを、同じ日本人として誇らしく思います。

(2013.5.13)

(日販発行:月刊「新刊展望」2013年7 月号より)

[インタビュー] 幸田真音さん │ 三橋貴明著『コレキヨの恋文』

Web新刊展望は、情報誌「新刊展望」の一部を掲載したものです。続きは「新刊展望」2013年7月号で!

新刊展望 7月号
【主な内容】
[まえがき あとがき] 仁木英之 隠れる、ということ
[特集] 日本経済を小説で学ぶ 幸田真音/堺 憲一
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