2013年 7月号
小川 糸Ito Ogawa
二年ぶりの新作小説『リボン』を刊行した。オカメインコ〈リボン〉が二十数年の一生の間に出会う、さまざまな人たちの物語。小さな鳥が人々をゆるやかに結びつけていく ─ 鳥の好きな小川糸さんが「七〜八年前から書きたいと思っていたお話」だという。人と鳥の絆、人と人の絆が心にやさしく響いてくる。同時刊の『つばさのおくりもの』は、オカメインコの視点で綴るショートストーリー。美しい絵に彩られた愛らしい一冊だ。
物語の舞台の一つ〈鳥のいえ〉のモデルがここ、埼玉県新座市にある「とり村」。飼鳥のレスキュー団体「NPO法人TSUBASA」の施設である。種々の理由で飼主のいないコンパニオンバードたちが百羽以上暮らしている。「物語の構想中、鳥を保護する施設があったら……とイメージしていたんです。実際にあると知って、すぐ取材させていただきました」。鳥を世話する様子や飼主を探す活動についても取材した。鳥と直に触れ合い、体温を感じたという小川さん。『リボン』は確かに生き物のぬくもりを伝えてくれる。
「『リボン』は自由なお話にしたいと思っていました。型にはめたり、固定観念にとらわれたりしない。鳥が飛んでいった場所で長居をしたり、一瞬でいなくなったりするように、あまり決め事をせず書こうと」。ゆえに、物理的な長さも物語の濃淡も個々に違った連作小説が一冊に収められたような形になっている。「〈リボン〉とまわりの人との距離も近かったり遠かったり」。キーワードは「自由」。「鳥は自由の象徴でもありますから」。写真の二羽はタイハクオウム。
(日販発行:月刊「新刊展望」2013年7月号より)
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