2012年 7月号
はらだみずきMizuki Harada
仕事場は「自宅から十三歩で出勤できる」離れ部屋。天井が高く、木と白壁の素朴な風合いが印象的な山小屋風の内装だ。書棚にはサッカー本(実用書、ノンフィクション、小説、洋書や自費出版物まで)がずらり。ここで終日執筆に励み、週末には地元のサッカーチームで「草サッカー」を楽しむ。
“草小説家”出身作家を自称する。「書いては机の引き出しにしまう……その繰り返しだったんです。『サッカーボーイズ』が本になった後、先の見通しもなかったけれど、小説を書き続けるため、プロ作家の道に舵を切る決意をしました。遠回りしてきましたが、書き続けていたことは今の自分の財産です」
『サッカーの神様をさがして』は、出版社を辞めてサッカーライターに転身した四十代の主人公が、サッカー部新設を目指した高校時代を私小説に書き始め─という物語。「現在ではなく自分の高校時代に設定することで、普遍的なサッカーの楽しさや変わらない友情を描きたかった」。青春を通り過ぎてきたすべての読者の胸を熱くするサッカー小説だ。

大きめの机を二つ並べても余裕の広さ。左が執筆用、右が校正作業用。反対側の壁沿いに本棚が並ぶ。右手前は熱帯魚の水槽。「主人公が熱帯魚を飼うという設定の小説を書くために自分でも飼ってみたら、増えちゃって」、今や水槽七個に。なおもグッピーが増殖中。地元サッカーチームのユニフォーム(山吹色の「36」)の隣は、「Jリーグ開幕の年に出版社の仲間と作った草サッカーチーム“カルチョバンビーノ(イタリア語でサッカーボーイズの意)”のもの。ずうずうしく10番をつけてました(笑)」
(日販発行:月刊「新刊展望」2012年7月号より)
今月の作品
- サッカーの神様をさがして
- サッカーライターに転身した尾高春彦は、仕事もなく高校時代の思い出を私小説として書き始める。そこには足が不自由な青年との出会いと別れがあった。春彦は今も後悔を抱くなか、意外な事実に気づかされていく…。











