2012年 7月号
『痛み』
三人の名手による警察小説集
思えばそれは、金曜日の午後八時からはじまりました。画面いっぱいの太陽。あれは夕日でしょうね。ボスがいて山さんがいて(そういえば最近お見かけしません)、長さん、ゴリさん(ちょっと変わった刑事役でお出になってますね)……。七曲署の熱血刑事たちの活躍に心を躍らせました。つづいて日曜日の午後九時。派手なアクションを繰り広げる大門軍団。当時は、もしあんな刑事さんがいたら恐いと思っていました。そして最後はタカ&ユージ。軽妙な動きと小ネタ満載で友人とよく真似をしていました。この『あぶない刑事』は、『太陽にほえろ!』と同じ4チャンネルで、『西部警察』と同じ時間帯で放送されていたのは偶然でしょうか?
やがて、『87分署シリーズ』『マルティンベックシリーズ』を読み始めます。おもしろかった! もちろんその頃は、いったい何がおもしろいのかなんて自分で分析はしません。ただひたすらページをめくっただけです。
そして現在。嬉しいことに僕は警察小説を編集することができます。
さっそくお話ししました。
事件の真相を知ったときの驚き。加害者の動機や被害者の無念。捜査する刑事の苦悩や駆け引き。そんな人間ドラマを今最も旬な作家の作品で読みたい。「具体的なテーマや枚数は不問。読み切り警察小説を」という依頼にこころよく応えていただいたお三方による作品集が『痛み』です。
貫井徳郎さん。事件の背景に、現代社会の暗部を練り込む貫井さんならではの作品。罪と刑のひとつの答え。ありがとうございます!
福田和代さん。なぜ僕が、コンビものを読みたかったということがお分かりになったのですか。二人の今後が気になります。ありがとうございます!
誉田哲也さん。これはもう、なんと言ったらいいのでしょうか。一本とられました。読むしかありません。ありがとうございます!
(日販発行:月刊「新刊展望」2012年7月号より)
今月の作品
- 痛み
- 事件だけを見るな、人を見ろ。真実はすべて心の中にある…。貫井徳郎・福田和代・誉田哲也、今、絶対読みたい3人の名手が結集した、奇跡の警察ミステリー集。警察小説の新たな大地を切り開く3編を収録。