2012年 2月号
『脳を創る読書』
それでも「紙の本」は必要である
「書籍の電子化」の流れがいや応なしに加速している。賛同者には、電子機器が一つあれば、何十冊と、異なった書籍が手軽に読めてかさばらない・便利だと好評だ。
一方で、「紙の本」の信奉者が厳然と存在する。手に取った存在感、風合い、におい、手ざわりを堪能して、「本は、やはり紙でなくちゃ」とのたまう。
電子書籍も紙の本も、それぞれの「良さ」があり、どちらがどうと競ってみても仕方がないのかもしれない。しかし、あえて「電子書籍がよいか、紙の本がよいか」と問うているのが本書である。
では、どの観点から「電子書籍vs紙の本」を論ずればよいのか。使い勝手や便利さで競ったのでは、先述したように、電子書籍に軍配が上がってしまう。読者もそんなことでは納得すまい。
そこで考えたのが、「人にとって、どちらがよいのか」である。しかし、「人にとって」では、まだ焦点が甘い。そこで行きついたのが、「脳にとって、どちらがよいのか」である。これなら、読者の関心が引ける!……? いま流行りの脳科学! これならイケる?!
ただ、脳科学の観点から「電子書籍vs紙の本」を論じている科学者は、いるのか。マスコミ等でいま脚光を浴びている先生方にあたる。しかし、そんな研究はしていないと、何人もに断られ続ける。
そして、ようやくたどり着いたのが、東京大学大学院の酒井准教授。専門は言語脳科学。簡潔にいうと、言語と脳の関わりについて研究をされている第一人者。企画の主旨を説明すると、「面白そうですね」と手応えのある返事。そこで早速、駒場まで出向く。そして、了解を得て、聞き語りでまとめさせていただいたのが本書である。
内容は、多分に「紙の本」の重要性を強調している。担当編集者(小生)の思惑通り。読者を裏切らない展開と言えるのかもしれない。ただし、誘導では決してない。その内容は……。ぜひ、ご一読をお願いします。なお、本書の電子化は考えていません。
(日販発行:月刊「新刊展望」2012年2月号より)
今月の作品
- 脳を創る読書
- 電子書籍化が進む今、やはり従来の「紙の本」がよいのか、それとも、時代の当然の要請として「電子書籍」がよいのか。本書では、『言語脳科学』の第一人者が、その問いに学究的な視点から真摯に答える。