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エディターの注目本

2012年 5月号
『マンボウ最後の家族旅行』
ユーモアがつないだ家族の絆
実業之日本社 文芸出版部 佐々木 登

本書は、昨年十月に急逝した北杜夫さんが月刊小説誌「ジェイ・ノベル」に亡くなるまで連載していた約二年分のエッセイをまとめたものです。最終回「又もやゴルフ見学」が絶筆となりました。

書名にあるように、北さんが大腿骨を骨折して以来、一家はリハビリも兼ねて、たびたび家族旅行に出かけます。北さんは「私の知らないところですべてが決まり」と嘆きつつ、ハワイ旅行から帰った翌日に苗場へ、さらに休む間もなく熱海、箱根へ、という超強行スケジュールをこなすのでした。

ハワイで「この木、何の木、気になる木」の木を見たり、温泉宿で生まれて初めてカラオケルームに行き、「犬のおまわりさん」を歌ったり、大して興味のないゴルフ観戦に連れていかれ、十八番ホールの芝生で鼾をかいて眠ったり……。

また、リハビリのため早朝から娘・由香さんに叩き起こされ、「ナチスのような」厳しさでストレッチ体操をやらされる日常生活。「悲鳴をあげたり、哀訴をしたりすると、いくらか痛みがうすらぐ気がする」自虐めいたユーモアについ笑いがこみあげてきます。

でも、そんなたわいもないように見える家族との日々が、実はどれだけ大切なことか。由香さんは本書の「あとがきに代えて」で「家族で食事をしたり、旅行に行けるのは当たり前のようだけど、ひとつひとつが大切な積み重ねである」とお書きになっています。北さんが亡くなった日の出来事をつづった文章は、最愛の父親を失った無念の思いを痛切に感じずにはいられません。先の言葉が重く心に響きます。

喜美子夫人による「マンボウ家の五〇年」では、出会いから五十年の日々を振り返っていただきました。北さんの躁うつ発症で家族の暮らしは一変、共和国を作ったり、株で破産したりと、壮絶ともいえる闘いの毎日。それでも別れようと思わなかったのは、人間的には「いい人ですから」と語る夫人。この家族なくして数多の名作は生まれなかったでしょう。

ご家族全員で紡いだ、当たり前のような、でもかけがえのない日々の記録。読んで何かを感じていただければ幸いです。

(日販発行:月刊「新刊展望」2012年5月号より)

今月の作品

マンボウ最後の家族旅行
マンボウよ。永遠なれ。家族との日々をユーモアたっぷりに綴る、北杜夫の最後のエッセイ集。遺稿と妻・斎藤喜美子氏が語る「マンボウ家の五〇年」と、娘・由香氏の「あとがきに代えて」収録。
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新刊展望のご案内

新刊展望 5月号
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【今月の主な内容】
◎懐想 中村 航 五年の後の五年
◎対談 ブータンと、うりゃうりゃの旅 高野秀行・宮田珠己
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