2012年 8月号
『眉村卓コレクション異世界篇T ぬばたまの…』
SF界の長老の名作を厳選!
本コレクションは、「日本SF第一世代」と呼ばれる眉村卓先生の作品群を、編者のSF評論の第一人者・日下三蔵先生が傾向別に選定・収録しようとするものです。今月から刊行する「異世界篇」は、見馴れた日常がいつの間にかふしぎな異世界に変わってしまう、眉村SFの真髄を凝縮した傑作集となっています。
眉村先生はこれまでもSFの幅広いジャンルを手掛けてこられましたが、今秋にはジュブナイルの代表作「ねらわれた学園」がアニメ映画化となり、眉村作品を目にする機会は今後ますます多くなるようで楽しみです。
表題作「ぬばたまの…」には、名前や職業だけではなく経歴からも眉村先生を連想させる「SF作家・マエウラタク」(!)という主人公が登場します。他の収録作にも眉村先生自身の経験を反映したと思われる描写が多くあります。
詳しくは本書収録の解説や自筆年譜などをお読みいただければと思いますが、「喜寿」のさなか作家生活五十年を迎えようとしている先生がこれまでの経験を作品に反映し、物語に深みを与えておられることがよくわかるかと思います。
ともかくSF界の長老に名作をご提供いただくのですからコレクションとしての良さが出る装幀にしたい……そこで、今回は繊細なデザインを得意とする北見隆先生にお願いしました。(北見先生に装幀いただいた『いいかげんワールド』〈眉村卓著・小社刊〉は、俳優の山崎努氏が書店でジャケ買い≠オ、そのうえ装幀・内容ともに絶賛の書評をいただいたことがあるのです!)
打ち合わせを重ねるごとに装幀に遊びが加わり、出来上がってみると、マーブル模様が異世界の奇妙さを思わせ、帯の破れたようなデザインがスパイスをきかせています。見ても、読んでも、そしてカバーをめくっても楽しめる一冊となったと自賛しております。
今後、眉村卓コレクションは「異世界篇」全三巻刊行後、「宇宙・未来篇」、「少年篇」……と続きます。
読者の皆様には〈眉村卓の世界〉を存分に味わっていただけましたら幸いです。
(日販発行:月刊「新刊展望」2012年8月号より)
今月の作品
- 眉村卓コレクション異世界篇T ぬばたまの…
- ごくありふれた日常生活の裏側に隣接する、ふしぎな世界…。眉村SFの傑作を厳選したシリーズ第1弾。傑作長篇「ぬばたまの…」に加え、「信じていたい」「マリオネット」など5篇の短篇を収録。