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[BOOKデータベースより]
仇敵の息子を一方的に赦し解放する太守セリム(『後宮からの逃走』)、自分を裏切った夫に慈悲を与える伯爵夫人ロジーナ(『フィガロの結婚』)、愛と赦しを説くザラストロ(『魔笛』)…モーツァルトのオペラに表現された「慈悲」や「赦し」を精緻に解釈することで、そこに内在する無差別な愛や慈悲の不可能性やジレンマ、そしてそれを乗り越える世界のありようを導き出す。社会学者によるモーツァルト読解を通じた、愛と慈悲をめぐる画期的な共同体論。
第1章 慈悲の問題系―モーツァルトのオペラにおける「赦し」(慈悲とその困難;モーツァルトのオペラと「赦し」―『イドメネオ』と『後宮からの逃走』;ふたつの世界の葛藤―エリアスの仮説から)
[日販商品データベースより]第2章 赦しによる共同体―『フィガロの結婚』(中断された赦し―『フィガロの結婚』第一幕・第二幕;三つの和解―『フィガロの結婚』第三幕・第四幕;「赦し主」と共同体)
第3章 ふたつの赦しなき世界―『ドン・ジョヴァンニ』と『コジ・ファン・トゥッテ』(愛の無差別主義者たち;赦しを拒絶する自由―『ドン・ジョヴァンニ』;不完全なものとしての平等―『コジ・ファン・トゥッテ』)
第4章 無差別な慈悲の残酷―『皇帝ティートの慈悲』(一七九一年のオペラ・セリア;無差別主義的な慈悲―『皇帝ティートの慈悲』第一幕;重唱に加わる皇帝―『皇帝ティートの慈悲』第二幕)
第5章 慈悲のポリティクスからの自由―『魔笛』(無力な王子―タミーノの物語;復讐者と赦し主の系譜―夜の女王とザラストロ;慈悲の共同体からの自由―パミーナの物語)
どんな相手も無条件に愛し赦す、そうした純粋で絶対的な慈悲の世界が存在するとしたら−−。だがそれは、現実には存在し得ないものであり、仮に実現したとしても生と社会への不都合に帰結してしまう。本書では、モーツァルトの赦しを題材とする後期のオペラ作品から、この二重の困難をめぐるアポリアを追求する。