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特集・対談

関連商品

島はぼくらと
辻村深月
瀬戸内海の小さな島、冴島。島の子はいつか本土に渡る。朱里、衣花、源樹、新は幼なじみの高校2年生。ともに過ごす日々は瞬く間に過ぎて。まぶしい故郷の物語。
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よだかの片想い
島本理生
顔にアザがあるアイコ。研究一筋の大学院生活を送っていたが、映画監督の飛坂と恋に落ちる。24歳女子の初恋の行方は。切なくもキュートなラブ・ストーリー。
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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。
辻村深月
地元を飛び出した娘と、残った娘。幼なじみの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは……。〈巻末解説・島本理生〉
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クローバー
島本理生
ワガママで女子力全開の華子。双子の弟で人生優柔不断ぎみな理系男子、冬治。モラトリアムと新しい旅立ちを描く、青春恋愛小説。〈巻末解説・辻村深月〉
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ツナグ
辻村深月
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員…ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
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あられもない祈り
島本理生
幼い頃からずっと自分を大事にできなかった“私”。理不尽な義父と気まぐれな母、愛情と暴力が紙一重の恋人に、いつしか私は、追いつめられていく。そんな日々のなか、私は、二十も年上の“あなた”と久々に再会する。そして婚約者がいるはずの“あなた”に、再び愛を告げられて―“あなた”と“私”…名前する必要としない二人の、密室のような恋。至上の恋愛小説。
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2013年 8月号

【対談】 辻村深月×島本理生 母になって、得たもの

同じ頃に出産を経験した二人が語り合う。新作小説にまつわるあれこれや、母になって変わったもの、変わらないもの。

辻村深月 Mizuki Tsujimura
1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞。『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『名前探しの放課後』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『光待つ場所へ』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『水底フェスタ』他著書多数。最新刊は『島はぼくらと』。

島本理生 Rio Shimamoto
1983年東京生まれ。高校在学中の2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。03年「リトル・バイ・リトル」で第25回野間文芸新人賞受賞。『生まれる森』『ナラタージュ』『大きな熊が来る前に、おやすみ。』『あなたの呼吸が止まるまで』『クローバー』『波打ち際の蛍』『真綿荘の住人たち』『あられもない祈り』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』他著書多数。最新刊は『よだかの片想い』。

明るく、まぶしく

島本 『島はぼくらと』は、気持ちがすごく明るくなる小説でした。
辻村 ありがとうございます。
島本 読み終わって元気になり過ぎて、勢いで白ワイン一本空けちゃったくらい(笑)。
辻村 島本さんらしい(笑)。光栄です。(登場人物の)誰が好きでした?
島本 それぞれ楽しめたので、今回、辻村さんは俯瞰してフラットに書いているのかなという印象がありました。
辻村 書き終わって振り返ってみると、今まで書いてきたものは自分の投影が少しは入っているキャラクターがいたのに、今回は一人もいなかったんです。それはおもしろかった。
島本 その分、細部の設定や構成がすごく練られていて、緻密に書き込まれたエンターテインメントで。以前から辻村さんの作品を読むと、生身の人間の体温や、衝突を経て理解し合うことが作品全体を通して描かれていると感じていたんですが、その両方がぎゅっと詰まっていることにすごく感動しました。
辻村 ありがとうございます。私は『よだかの片想い』を読んで、恋がしたくなりました(笑)。初めて好きな人や彼氏ができるときの楽しさ、胸がキューンとなる感じをこの齢で味わえるなんて。片想いの幸福感ってありますよね。実際つき合ったら途端に相手が生身の人間になってしまうんだけど、ただ好きでいる片想いの楽しさ。恋愛小説で、こんなにページをめくる手が止まらなくなるものって、なかなかない気がします。読みながら、とにかく楽しいんですよね。最初に二人で約束してお酒飲みに行って……。主人公のアイコと一緒になって盛り上がりました。その幸福感と楽しさをいつまでも読んでいたいから、むしろつき合わないでほしいと思ったり。つき合ったらきっと島本さんのことだから不穏さが見えてくる。タイトルが「片想い」だし、せつないことも待っているんだろうと思ったけど、それでも最後まで読んで、本当にいいものを読ませてもらったなと感じました。
島本 ありがとうございます。
辻村 表現も素晴らしくて、最後の場面では涙が流れました。アイコの立ち位置のぶれなさ、潔癖なほどの正しさみたいなものにまぶしく憧れながら読みました。
島本 今回は主人公のイメージが自分の中でしっかり定まっていたので、そのおかげで最後までぶれずに書くことができたかなと思います。それから、(顔の)アザというテーマが結構ずしっとくるものだと思ったので、それ以外のところは極力重くしないように、楽しさや幸福感を出そうと。他のキャラクターも含めて、いつもより明るめにというのは全体的に考えていました。
辻村 アイコが今までどう生きてきたのか、エピソードによって最初の数十ページで伝わってきました。それと、アイコとお母さんの関係。恋愛だけじゃない、これまでどう生きてきたのか、これからどう生きていくのか。一人の女の子のすごく眩い一定期間を見せてもらった感じです。
島本 その辺りは自分に子どもができたことが大きいかも。お母さんの立場になって想像してみたら、主人公以上につらいのかも知れないと感じたことで、その部分をより丁寧に書きたいと思うようになりました。辻村さんの『島はぼくらと』でも、島にIターンしたシングルマザーの蕗子の話や母子手帳のエピソードが繊細丁寧に書き込まれていますよね。
辻村 母子手帳の話は、ヨシノみたいな職業であるコミュニティーデザイナーの方から聞きました。こういう取り組みをしている人たちが実際にいると聞いて衝撃だったんです。そのときは自分も妊娠中で母子手帳を持っていたけど、成長の数値を書き込むくらいしか使ってなくて。「今の気持ちを書いておきましょう」という欄はあるけど、全然書いてなかった。
島本 私も書いてなかった。
辻村 でも島のお母さんたちは、自分の言葉で書くところこそが真っ黒になっていると。母子手帳は母親のためのものという気持ちで私はいたけれど、島のお母さんたちにとっては子どもにあげるためのもの。全然目線が違う子育てをしているんだなと思ったんです。(島には高校がないので)子どもが中学を卒業したら島から送り出さなければいけないという覚悟もしているし。
島本 15歳までしか一緒に居られないんですよね。いざ自分が親の立場になってみたら、15年って短く感じるだろうなと思いました。
辻村 子どもから見る年月の長さと親から見る子の成長の年月はきっと違うんだろうなというのが、なんとなくわかり始めてきた。

今いちばん書きたいもの

辻村 『よだかの片想い』で印象的だったエピソードの一つは、大好きな教授とすべてわかり合えているわけではなかったとアイコが知るところ。大好きだったおじいちゃんも、自分が見ていた一面だけじゃなかった。そういうことをアイコが短い間に獲得していく話でもあると思います。この主人公は、人と人との関係性でままあることを、なんてまっとうな目で見ていることか。島本さんの書かれる主人公にはいつもその感じがあります。こんなにも傷つけるものがいっぱいの世界で、それでも自分で乗り越えていくのかと驚かされることがたくさんあって。
島本 主人公のまっすぐさや強さは、自分の憧れが入っているところもあります。それから私自身、20代半ばって変化の多い時期だったという印象があって。大人になったことで親と改めて衝突があったり、友達も社会人になって関係性が変わったりして。その変化の中で、親しい相手からの思いがけない言葉でショックを受けることもありました。もっと理解されていると思っていた、でもそれこそ自分の思いこみで自分も相手のことをわかっていなかったし、自分のことをわかってもらう努力もしなければならなかったし……。そういうことをすごく考えた時期。それが小説に影響しているのだと思います。
辻村 アイコが友達と話しているときに取り残されたように感じたり、苦手意識を持っていた先輩が意外とわかってくれたり。そういう、白か黒かではない人間関係も読んでいてすごく共感しました。
島本 それは、私が辻村さんの小説で感じることでもあるんです。特に女同士の衝突とか。どうして辻村さんはこんなに正面から向き合うことができるのかと、読むたびにまぶしく感じます。
辻村 でも私は、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』の文庫解説を島本さんに書いていただいたとき、「こういうことだったのか!」とすごく腑に落ちたんです。私の書く女同士は、ライバルじゃないけどライバル心もないわけじゃなく、友情を賛美しているわけでもないけれど……という立ち位置のものだったんだと、島本さんの解説の文章によって自覚した。自分が書いている女の友情が何なのかを見つめ直すきっかけになりました。
島本 普段はそんなに意識して書いているわけではないんですか。
辻村 そうですね。ただ、友情や故郷、田舎といったものに対しては、単純な賛美や盲目的な肯定はしたくない。『島はぼくらと』での田舎に対する距離感もそうです。実は今回の作品は、書き始めたときは朱里、衣花、源樹、新という主人公の高校生4人がいなかったんです。書こうとしていたのは、30代前半の自分と近しい年頃の蕗子やヨシノの物語。蕗子が冴島出身という設定で、Iターンの男性の本木がいて……。でも100枚くらい書いてみて、まったく田舎を肯定できる気がしないし、蕗子がヨシノと友情を築いていくこともできそうにない。
そんなタイミングで直木賞をいただいたんです。これでもう地方都市の閉塞感とは闘わなくていい、今までの闘いがある種報われたような気がして。今度は自分が今いちばん書きたいものを書こうと。作家になったばかりの頃は、自分が読みたいもの、自分が憧れてきたものに近いものを書くという気持ちがありました。あの頃と同じように10代の子たちを主人公にして、自分が読みたいもの、書きたいものを書こうと思ったんです。ただ、今まで私が書いてきた10代の子たちの話は、圧倒的に「教室小説」。恋愛小説でも部活小説でもなく、放課後のにおいがあまりしないというか。『名前探しの放課後』なんてタイトルが「放課後」なのに(笑)。今回『島はぼくらと』を書き終えて、初めて10代の子たちを空の下に出したんだなと気づきました。
島本 そういう立ち位置だから、島を極端に否定もしないし、だからといって島はいいところだという地方賛美小説にもなっていないし、という絶妙な距離感なんですね。

(2013.6.10)

(日販発行:月刊「新刊展望」2013年8月号より)

対談はまだまだ続きます。続きは「新刊展望」2013年8月号で!

Web新刊展望は、情報誌「新刊展望」の一部を掲載したものです。
全てを読みたい方は「新刊展望 8月号」でお楽しみください!

新刊展望 8月号
【今月の主な内容】
[まえがき あとがき] 中脇初枝 終わりからはじまる物語
[対談] 母になって、得たもの 辻村深月・島本理生
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