2012年 10月号
中島さなえSanae Nakajima
二〇〇九年、デビュー作出版後に「生まれて初めて脱関西」。東京の東端に居を定めたのは「劇団やミュージシャン仲間と飲み歩かないでしっかり本を書くため(笑)」。一緒に上京したうさぎ、父の写真、ムーミン・グッズ……大切なものに囲まれての執筆生活だ。「十代の頃はミュージシャンを目指したけど、子どもの頃から潜在意識に『書く仕事』はあったと思う。音楽はスポーツみたいにスカッとします。でも、ものを書いた後の感覚は喜び。書くことを仕事にできて幸せです」
『お変わり、もういっぱい!』は、身のまわりの「変=お変わり」な人、出来事、思い出などを綴ったエッセイ集。「昔から野次馬根性は旺盛で、見に行っては巻き込まれる型。いまや職業病かも」。ネタはバラエティに富み、終始一貫、爽やかな笑いをくれる一冊だ。「身を削って書きました(笑)。小説もエッセイも自分の中のものを出して書いていくからには、何でも取材だと思ってどんどん外に出ていかなければ。これからもお変わりな人やものを求めて、狩りに出たいと思います!」
机はオーダーメイド。「仕事も食事も全部ここで。実家がそういう環境だったんです。大きい一枚板のテーブルが居間にどーんとあって、家族みんなそこから動かない。母は生活道具を全部手の届く場所に置いて、向かいで父はギターと一升瓶を両脇に据えて。そんな一族なんです」。ケージ内に黒うさぎ。名前はムーンライト横山。「三千円で売れ残っていたくせにエサ代とか空調とかすごくお金がかかる。いつも言ってます、エッセイのネタや小説の主人公にでもなって恩返ししなさい、家賃払えと(笑)」
(日販発行:月刊「新刊展望」2012年10月号より)
今月の作品
- お変わり、もういっぱい!
- いつからだろう。怪しい人物や物事を見つけると、すぐさま追跡したくなる。スリー、トゥー、ワンッ、オープン…。この世はびっくり箱、男も女もみなお変わり。抱腹絶倒のノンストップ・エッセイ集。