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[BOOKデータベースより]
なぜ「たまたま」や「ひょんなこと」や「奇跡」で小説を組み立ててはいけないのか。昭和10年代、中河与一の偶然文学論は近代文学伝統のリアリズムに対して果敢に挑戦した。本当にリアルなのは偶然の方なのだ。が、その偶然なるものは、どんな“触れ‐合い”を排除することで成り立っているのか。中河、国木田独歩、寺田寅彦、葉山嘉樹のテクストに宿るcontingencyを“遭遇con‐tact”と“伝染con‐tagion”、つまりは“触れ‐合うことcon‐tangere”の主題系として読み解く。偶然という言葉でもってなにかを語った気になってはいけない。
序 偶然を克服/導入せよ?
第1部 コンタクト(偶然性の時代;中河与一『愛恋無限』と日本的伝統;国木田独歩『鎌倉夫人』と主題“場所性”;国木田独歩『号外』と主題“外部性”;国木田独歩『第三者』と主題“感性” ほか)
第2部 コンテイジョン(中河与一の初期小説と主題“伝染性”;寺田寅彦の確率論;寺田寅彦の風土論;葉山嘉樹文学の住環境と主題“混合性”;葉山嘉樹の寄生虫 ほか)