2012年 1月
原田マハMaha Harada
原田マハさんが暮らすのは、武蔵野の面影が残る緑豊かな住宅街。マンションでありながら離れ≠ェついており、その一室を書斎としている。「一旦外に出ることで気分が変わるし、日常と遮断されるので集中できます」。
机の前面にある窓からは、友人の造園師に設計してもらったという坪庭が、その奥には敷地に植えられた桜の大木が望める。「鳥が遊びに来たり、疲れたなと思ったら風景を眺めたり」。居乍らにして四季折々の自然が楽しめる、なんとも贅沢な空間だ。
『永遠をさがしに』は、世界的指揮者を父に持つ16歳の高校生・和音の物語。チェリストであった母が家を離れてしまい、自らもチェロから遠ざかっていた和音が、豪快な新しい母$^弓と出会い、友人たちに触発されながら再び音楽と向き合っていく。「楽器や聴衆、家族や守ってくれている人との、音楽を通した心の響き合いを描きたかったんです」。全編を包み込む豊かな音色に彩られ、悲しみを乗り越える姿にこそ勇気付けられる。温かなエールに満ちた青春小説だ。
硝子扉を通して見えるのが母屋のリビング。部屋に合わせてデザインしてもらった机と本棚はマホガニー製だ。「家中で一番高価なものなので、火事になったら一番に持ち出さないと(笑)」。周辺に学校が多いこともあって、「登下校時や子どもが遊んでいる時間は食事や昼寝をしたり、ウォーキングに行ったりしています。仕事をするのは午前中と夕方4時頃から7時頃まで」。「物書きをやっていると、自分の環境を整えるのは大事なこと」という原田さん。さらなる理想の仕事場作りを計画中だ。
(日販発行:月刊「新刊展望」2012年1月号より)
今月の作品
- 永遠をさがしに
- 世界的な指揮者の父が海外赴任となり、ひとり日本に残った女子高生、和音。そこへ突然新しい母がやってきた。型破りの彼女には秘めた過去があり…。母と娘の愛情、音楽、友情、初恋。そして家族の再生物語。