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[日販商品データベースより]
ライフステージごとに直面する困難には、移民やエスニック・マイノリティの場合、独自の負荷がかかる。
在日コリアンはそんな日常の連続で人生を送る。けれども、プライベートな事情を広く多くの人に語ることはないだろうし、当事者はそれを当たり前でしかないことだと思い込まされていたりもする。かくしてそうした在日コリアンの生活の大変さは見過ごされてしまうことになる。“結婚式場選びに時間がかかった(チャンゴを持ち込んで、たくさんのチマチョゴリ姿の女性たちが踊るのが一般的なので、いやがる式場もないわけではない―少なくともかつてはそうだった)”とか、“一世のおばあちゃんがボケ始めたら済州島方言しか話さなくなり介護をどうしようか困っている”といった話を聞くマジョリティ日本人はほとんどいないだろう。そうした困難に想像力を働かせて社会全体を変えようとするマジョリティ日本人はますます少ない。
マイノリティ当事者でも、そのようなライフステージそれぞれの問題は、未経験であればよくわからないし、経験した者も、なんとかそれを通過して次のステージに進んでいる時にはもうあまり語らないかもしれない。また、なかなか変化しないと言われる日本の社会制度も、それなりに変わってはいるので、自分たちが知っていることとは勝手が違う、制度が変わってしまっている、というようなこともあろう。もちろん、かつてあった差別がなくなっているという喜ばしいこともあるわけだが、時代状況の変化で新たに生じている問題もそれなりにあるだろう。
年齢層を問わない社会集団全体に関係する差別や生きづらさは、意識されやく、論じられることが多い。しかし、ライフステージごとに直面する問題は、見過ごされがちかもしれない。そうした、ライフステージに着目した、在日コリアンの経験を多く聞き取り、日本社会の問題点を改めて点検する作業が必要だろう。
個々人のライフステージ、それが何世代も積み重なった後の、“その先”も、社会集団としての在日コリアンにとっては重要になっている。具体的には、死んでいった人たちの人生を、在日コリアンという社会集団の歴史として多くの人―当事者と一部の専門家だけではなく―の共有財産にしていくべきことを考える段階に来ている。そのためには、学校で用いる歴史教科書での記述、公立の歴史系博物館での展示に在日コリアンの説明が組み込まれる、大衆的なドラマ、映画、小説などでごくあたりまえに在日コリアンが登場するといった状況を作ることが必要だ。あるいは、在日コリアン関係の遺物や行事、コリアンタウンの街並みなどが文化遺産として登録される、といったことも効果を持つだろう。
様々な人びとの連携で、夢を現実に近づけられることを信じたい。在日コリアンの歴史を振り返れば、不可能と思われていたことを可能にしてきたことは多々あるのだから。