[BOOKデータベースより]
被害が加害を生み、そして被害を生む。数々の被害を受けた少年たちが、非行へと走っていく。非行少年に積み重ねられた被害に対する支援の必要性を考える。
1 非行少年から見えるさまざまな被害と埋め合わせの欠如(非行少年が遭ってきたさまざまな被害;弁護人・付添人から見える被害1…虐待を受けて育った少年の立ち直りに必要なもの;弁護人・付添人から見える被害2…少年の被害を受け止めないことによる二次被害 ほか)
2 被害を受けた非行少年の立ち直りに必要なこと(非行事例から少年の被害感と具体的援助を考える…元家庭裁判所調査官の視点;少年院における教育と支援;就労支援を通した立ち直り)
3 被害の埋め合わせに向けた理論的課題(非行少年が受けた被害の埋め合わせの実践的必要性;非行少年に積み重ねられた被害の埋め合わせの法的根拠;非行少年の被害の埋め合わせに向けた提言)
非行少年の中には虐待被害を受けてきた者が少なくないことは20年以上前の法務省による調査でも明らかとなり、『令和3年版犯罪白書』においても少年院入院者の被虐待経験がグラフで示されるようになった。男子で40%、女子で70%に虐待歴があることがわかる。この他、非行少年が受けてきた被害には、学校におけるいじめや体罰被害もある。学校において、適切な教育を受けられなかったことを被害と捉えるなら、非行少年がこうした被害を受けた事例は枚挙に暇がないと考えられる。さらに、障がいがありながらも、親や周囲に障がいに気づいてもらえずに、適切な支援が受けられなかったことも被害と言うならば、これも発達障がいのある非行少年を中心に、少なからず、そうした被害を受けた非行少年がいることが確認されている。
こうした犯罪被害や生育過程でのネグレクト被害等を受けてきた者が非行や犯罪に走った場合、従来は、そうした被害を受けてきたことが司法手続において弁護人・付添人の努力によって立証されたとしても、それはせいぜい不遇な過去があったという程度の法的評価しかなされてこなかった。しかし、犯罪被害者への支援が声高に叫ばれるようになった昨今であっても、犯罪被害を受けた非行少年に、その被害に対する支援がなされたという事例はまずないように思われる。たいていは、被害は放置され、さらに被害が積み重ねられた上で非行に至るように見受けられる。自らが大切にされた経験がない少年が、危機に陥ったときに、他者を尊重し、誰にも被害を与えない形で危機を乗り越えることは極めて難しいと言わなければならない。
被害が積み重ねられてきた上で非行に走った少年が、自らの非行による被害を受けた者に対して、ただちに謝罪できるのであろうか? 自らの被害に対して誰からも謝罪を受けていない非行少年がただちに被害者に謝罪できるとは考えられない。さらに、こうした非行少年が受けてきた被害を等閑視して、保護処分に付したり、ましてや刑事処分を科して、被害者への謝罪を強制したとしても、それは本当に非行の被害者が望む結果をもたらすとも考えられない。
本書は、非行少年に関わってきた専門家か?、 非行少年に積み重ねられる被害にスホ?ットラ イトを当て、救済と支援のための実践的およひ?法的必要性を提言する。
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