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- 快の錬金術
-
報酬系から見た心
脳と心のライブラリー
- 価格
- 2,750円(本体2,500円+税)
- 発行年月
- 2017年09月
- 判型
- 四六判
- ISBN
- 9784753311248
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[BOOKデータベースより]
第1部 報酬系が人を支配する(頭医者は不埓な夢を見る;報酬系という脳内装置がある;Cエレガンスは報酬の坂道を下っていく ほか)
[日販商品データベースより]第2部 報酬系の病理(射幸心という名の悪夢;嘘という名の快楽1;嘘という名の快楽2―「弱い嘘」つきは人間の本性に根差す ほか)
第3部 報酬系と幸せ(いろいろなハイがある;フロー体験の快楽;男と女の報酬系 ほか)
本書は私がこれまでで一番書きたかったことをまとめたものである。それは次の疑問に答えるためのものだ。何が人を動かすか?What makes a human being tick ? (人間という時計の針を動かすものは何か?)これは私が物心ついて以来持ち続けている関心事である。人を見ながら、そして自分を見ながら「どうしてこんなことをするんだろう?」と素朴に思いをめぐらす。そんなことを私はごく幼少のころからいつも考えていたと思う。心を扱う仕事(精神科医)についてからもずっとそうである。私の治療者としての一言に相手が喜び、失望し、いらだつのを感じながら、そのことを問い続ける。ある薬を投与し始めてから顔色が急によくなり、話し方が違ってくるのを見て驚く。若者がある書を読んで突然発奮して夢を追い始めるのを見て考え込む。そしていつも行き着くのは、「快、不快」の問題である。私たちの脳の奥には、ある大事なセンターがある。それは「快感中枢」とも「報酬系」とも呼ばれている。そこがある意味では人の言動の「すべて」を決めている。心身の最終的な舵取りに携わるのが、このセンターだ。報酬系はもちろん人間にのみ存在するわけではない。おそらく生命体の最も基本的な形である単細胞生物にも、その原型はあるのだろう。しかしそれはおそらくドーパミンという物質が媒介となることにより始めてその正式な形を成す。たとえば原始的な生物である線虫の一種は、脳とはいえないほどシンプルな神経系を備えているが、そこにはすでに数十の神経細胞からなるドーパミンシステムが見られる。線虫(本書では第4章で「Cエレ君」という偽名で登場する)は快感を覚えてそれに向かって行動しているのだ!人を、あるいは生き物を、快、不快という観点から考えることはおそるべき単純化といわれかねない。しかしそれでこそ見えてくる問題もある。私たちが行う言語活動は、ことごとく快を求め、苦痛を避ける行動を正当化するための道具というニュアンスがあるのだ。そう考えることで私たちは私たち自身を一度は裸にすることができるのだ。その意味では本書が示す考えは、精神を扱うどのような理論に沿って考えていても、いったんその枠組みから離れ、より基本的な視点から捉えなおす助けとなると考える。(「はじめに」より)