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[BOOKデータベースより]
瀬戸内の小さな街のジャズバーに、いろんな人がやって来る。最後には、ついにあの骨董屋のおばあちゃんまで…。ちょっと変わった人たちの新生・再生の物語。精神科医、青木省三による初の小説。
[日販商品データベースより]舞台は、瀬戸内の小さな街のジャズバー。さまざまな事情で孤立したり、行き詰まったりしている人たちが入れ替わり立ち寄っては、マスター相手に自分語りを始める。なかには、まったく話さない人もいたが、やがて……。
ここには、もしかしたら発達やこころに何らかのしんどさを抱えているのでは? と思えるような少し変わった人たちが多く登場してくる。本書は、そういう人たちが、地域の中で人や自然や土地の力に支えられながら、ふつうに生きていこうとする姿を、その活き活きとした魅力とともに描こうとする、素朴な祈りのような作品である。
ほかの人と、何かちょっとリズムが違う、一見近寄りがたくて話しにくい、なんとなくふつうの応対がしにくい……そういう人たちは社会の中で孤立したり疎まれたりしやすい。そして、誰にも相談できず行き詰まった果てに精神科医療の現場を訪れるようになることも少なくない。
本書の著者は、日本の思春期・青年期精神医療では著名な精神科医の一人である。40年以上に及ぶ長い臨床経験のなかで、診察室の中で出会った人たちのうち何割かは、何かの出会いや支えがあれば、〈患者〉や〈クライエント〉にならずに、街の中でその人らしく、その人なりの楽しみをもって生きていけたのではないか、症例や事例のケースとしてではなく、街の中に生きる少し変わった人、ユニークな人として出会えたのではないかという気がしてならないという。
本書に登場するバーのマスターや、お寺の和尚さん、骨董屋のおばあちゃん、自転車屋のおじさんのような人たちが街の中にいれば、そして、もう少し人との出会いや自然なふれ合いの場があれば、社会の中で、その人なりのやり方で生きていける人たちはもっと増えるのではないか。
人と人とのつながりが薄まり、人々の中での孤独や孤立が日々問題になっているなかで、おそらくこの本に描かれているふれ合いやぬくもりが、また、共にいることの大切さや、おせっかいとも思える「ひと言」などが、かすかな絆への希望を生み出す……そんな気持ちにさせてくれる物語。
著者による各章の挿絵が、なんとも言えず温かい世界を描いている。