[BOOKデータベースより]
1 序論
2 エネルギー環境の変化
3 リチウムイオン蓄電池
4 蓄電池のモデル化とシミュレーション
5 蓄電池の状態推定
6 蓄電池管理システム(BMS)
章末問題解答
本書の特徴は,多くの紙面をリチウムイオン蓄電池のモデル化と最適制御および管理,活用技術の説明に割いたことである。安全かつ長寿命な蓄電システムの構築に必要な技術を初めて学ぼうとする人たちが,エネルギー活用技術の全体像を把握しながら,無理なく読み進めることができるよう,以下の構成とした。
1章,2章は導入であり,社会規模でのエネルギーシステムの全体像と課題,その中での蓄電システムの位置づけと役割について説明した。さまざまな発電方法における再生可能エネルギーの特徴は,発電と需要の調整技術が課題であることである。それらの調整のために,社会実装としてキーとなるのが蓄電システムであり,大きな価値を生むということを示し,3章以降を通読するための動機づけとした。
3章では,蓄電池の進化と役割の変化を歴史的背景から振り返り,より過去の時代から長期にわたり活用されている鉛蓄電池や将来高い安全性かつ高効率な蓄電デバイスの主流として期待されている固体電池との比較を行いながら,現在および今後主流の一翼として期待されるリチウムイオン蓄電池の動作原理や実装,特徴について詳しく解説した。
4章と5章ではBMS(battery management system)の観点から,電気化学的なデバイスをコンピュータ制御するために必要な技術を解説した。まず,4章で等価回路を用いたリチウムイオン蓄電池の電気的特性と温度特性のモデル化およびシミュレーション技術について解説し,電流に対する電圧応答から内部インピーダンスの特徴を理解し,その後,内部インピーダンスの温度特性や充放電動作に伴う温度分布の変化を解析するための手法を示した。また,単一セルの特性だけではなく,組電池にした場合のモデル化方法や特性ばらつきの扱い方に関しても解説を行った。5章では蓄電池の内部状態を推定するための技術として制御工学で用いられるカルマンフィルタや逐次最小二乗法などの最適化技術を丁寧に解説した。マイコンなどを用いてプログラミング実装する場合にも理解が容易となるように配慮した。また,蓄電池の代表的な劣化現象と等価回路モデルでの変化から劣化モードや劣化割合を認識する方法を解説した。将来的には蓄電池セルに搭載されたBMSが高機能化し,内部抵抗のリアルタイム測定や機械学習による劣化現象の把握,さらには,残寿命,残価値の推定が可能となることが予想されるので,それらの高度な状態把握に向けた技術の紹介も行った。
最後に6章では,BMSシステムへの要求や機能についていくつかの使用シーンを想定して,全体のまとめを行った。
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