[日販商品データベースより]
川と町のあいだの森。くずれた崖の奥底で、黒いたまごから、がろあむしの赤ちゃんが生まれた。がろあむしは、まっくらな世界をかけまわり、小さな生き物たちを食べて大きくなる。ときに襲われてボロボロになりながらも、生きるために走りつづける。
やがて大きくなると、オスと出会い、たまごを産む。しかしある日、がろあむしは燃えるように赤い体とともに、その一生を終える。だれも知らない地下の暗黒世界で、ひとつのドラマが終わったとき、町は――
地下の暗黒世界に広がる宇宙と、そこに生きる小さな虫の大きな一生。そして、おなじ地平で変わりゆく人間たちの社会を濃密に描き出した怪作。『つちはんみょう』で小学館児童出版文化賞を受賞した著者が、取材に約10年を費やした渾身の絵本。
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1匹のガロアムシの誕生から、一生を終えるまでを、迫力のある精緻なタッチで描いた大判絵本。作者はデビュー作『しでむし』や『ぎふちょう』を描いて注目され、『つちはんみょう』で小学館児童出版文化賞を受賞した舘野鴻さん。小さな虫の小宇宙を描き出すミクロの視点、徹底した取材・観察、それらを反映させた力のある画で、抜きん出た存在感を示す作家です。本を開くとまず目に飛び込んでくるのが、川と町のあいだに挟まれた、みずみずしい森の緑。のどかな鳥瞰図から、ぐーっと視点が下りていき、森のくずれた崖の、落ち葉や岩がごろごろとした地面の奥底に入っていきます。地下の真っ暗な世界で、黒いたまごからガロアムシのあかちゃんが生まれたところから、虫の物語のはじまりです。生まれたばかりの小さなガロアムシは、たくさんの他の小さな虫に混じって、暗い地下を走り回ります。獲物を探し、捕まえて食べて命をつなぎ……。ときには食べるばかりでなく、逆に食べられそうになり、足を食い切られながら、生きるために走りつづけます。やがて成虫になってオスに出会い、自分のたまごを産むまで……。ガロアムシが一生を終えると、視点は地下から地上へと上がっていき、ふたたび鳥瞰図があらわれます。しかしそこに広がるのは、冒頭と同じ森の姿ではなく、開発がすすみ、町が広がって行った新しい地図であることがわかるのです。およそ5年から8年と言われるガロアムシの寿命。1匹のガロアムシが誕生して死ぬまでの年月と、同じ年月を、地上で暮らす人間たちの変わりゆく町の世界と対比させながら描き出しています。舘野鴻さんは実際、今作のために約10年という月日をかけて、ガロアムシの取材・調査を行ったそうです。巻末にはガロアムシ以外にも「この本に登場する生きものたち」と題して、たくさんの虫の名や科・属などの分類が紹介されています。2017年に発売された『つちはんみょう』で小学館児童出版文化賞を受賞して以来の、待望の新刊。ガロアムシも他の虫たちも、人間の営みとかけ離れた世界で生きているように見えて、じつは同じ世界で、かけがえのない命の時間を重ねていること。過酷な生を生きながらえ、次世代へ命をつなぐ虫の姿が、本書を通じて伝わってきます。大いなるダイナミズムを感じる絵本作品です。
(絵本ナビライター 大和田佳世)
がろあむしの一生を追った作品です。
ほとんどが、ガレ場と呼ばれる地下が舞台なのですが、
まずは、空の俯瞰図から始まることで、
人間が住んでいる場所と地続きであることが体感できます。
ガレ場では、もちろん、他の生き物たちもうごめいています。
無事生まれたがろあむしは、他の虫を捕獲し食べ、
自らも襲撃され、身体の一部を食べられ。
さらには共食いし、産卵して。
生々しいですが、まさに生きる姿です。
そんな一生を終え、また俯瞰に戻ると、人間の開発した跡が見て取れます。
あとがきによると、10年ほどかけてガレ場を再現した装置で観察したそうです。
小学生くらいから、生き物の営みをしっかり見届けてほしいです。(レイラさん 50代・兵庫県 )
【情報提供・絵本ナビ】