紫陽花に祈ふ
曇天の下の紫陽花こゑあらばわれに聞かせよ死者の言の葉
第35回現代短歌評論賞受賞者による待望の第一歌集。
「こうした死生に関わる詠が若い作者でありながら多く、
また深い認識を示していることに稀有な感受性を感じる。
今にも声を発しそうな曇天の紫陽花、
そこに作者が祈うものも死者や生者への思いかも知れない。」
大塚寅彦(解説より)
【歌集より】
夏雲の亡霊めくをうつうつと仰げばさびし紫陽花の辻
吃音の韓非子かなしコミュ障のわれに夕立降り止まざりし
細胞の悲鳴が鼓膜の隅つこに堆積されてゆく水曜日
むらさきの花影ゆれて虫めづるVTuberの配信はじまる
ドストエフスキーのひげを束ねたら魔女の箒が出来るだらうか
火葬場の風にさらさらたらちねの母の燃え殻ひかりつつ舞ふ