犬と、母と父と、あの時代と。
昭和・平成を生きた家族、そして2匹のメリーの物語
―静かに閉じ込めておきたい記憶が、ここにある。―
「犬は飼わないはずだった」。そんな著者がある日出会ったジャーマン・シェパード“メリー”。
やがて突然の別れが訪れ、心にぽっかりと空いた穴を埋めてくれたのは、先代と同じ名を与えられた2代目“メリー”だったー。
女子学生の死をきっかけに空気が一変した、学生運動の最中の大学キャンパス。
通信技術の現場で異国を飛び回った仕事の日々。
幼き日、泳ぎの得意だった父の背に乗って渡った海。
家計を支え、学費まで工面してくれた母の背中。
そして愛犬たちと過ごしたかけがえのない時間……。
著者が「糊付けしておきたい」と願った人生のスナップショットを、淡々と、それでいて深い愛情と余韻をもって綴った自分史的エッセイ。