古往今来 忘れられた名著を味わう
夏目漱石や森鴎外などよく知られた文人の作品は、文庫などの手にしやすい書物になり、また教科書などにも掲載されて読まれる機会も多いが、
あまり目にする機会のない明治の文明開化期の作品にも、これらの文豪にも負けず劣らずの優れたものは多くある。
現代ではもう忘れ去られてしまっているが、明治期にはベストセラー作家であった人たちの本は、実はいま読んでみるとすこぶるおもしろい作品が多い。
文明開化期の、和装本から洋装本にきり変わっていく時期の過渡的な本のかたちを「ボール表紙本」と総称しますが、その内容は実録小説、人情小説、伝記、翻訳本、「刑法」といった法令書まで多彩なジャンルにわたっていて、実に多彩でおもしろいのです。
本書は林望先生が、ボール表紙本のものを中心に、いまだから読んでみたい「忘れられた名著たち」を厳選し、紹介しています。
出口の見えない経済不況、政治の混沌、世界を巻き込んだ大戦前のようなきな臭い世界情勢……こんな時代だからこそ、先人たちはどのようなことを考えていたのかを知るのもよし。江戸から昭和の隠れたベストセラーの一端を読んでみてはいかがでしょうか?