しらさぎ
「人は悲しみを知って豊かになる」とは
先師松村英一の言葉である。
一時期、遠目にも痛ましい姿を垣間見たが
「歌は自らのためにある」という本然に著者は蘇った。
繊細な感覚と才のきらめき、更なる深化を約束するような第二歌集である。
── 永井正子・「帯」より
《歌集より》
風に触れ光に触れて萌ゆる芽のごとくありたし吾のこころも
歩み入る古きみ寺にかへるでの重なる影が苔にさ揺らぐ
「真珠湾は伊勢にあるの」真顔にて問ふ若者にわが振り返る
糠雨に暮れゆくタベニ人目を産む躊躇ひを娘の言へり
さやさやと羽を広げて誘へる応挙の孔雀われを包めり