写本に描かれた本たち
西洋中世からルネサンスにみる本の象徴性と実用性
著者:ルーシー・フリーマン・サンドラー 加藤磨珠枝 立石光子
出版社:白水社
価格:4,500円
発売日:2025年09月
判型:B5/ページ数:258
ISBN:9784560091920
写本挿絵が語る書物文化の構造、性質、存在意義
本書は、大英図書館所蔵の五〜十六世紀末の貴重な写本を中心とする図版九十点あまりを土台に、いわば写本挿絵自身が語る書物の社会的、霊的役割の分析を、目で見ながら味わうものである。
序論では、書物の物理的な形式、書物の象徴性と実用性、古代からルネサンスにいたる書物のイメージの変遷、ヨーロッパ文化圏を超えた広域な書物文化についての考察がなされ、本書で扱うテーマ全体が整理されている。続く第I・II部では、キリスト教信仰における聖なる象徴としての「神の言葉」や「命の書」といった概念の視覚化、世俗写本に関しては「記憶の宝庫」や「法の重み」を代弁する本の姿が登場し、それらを知の伝統、芸術、信仰の交差する場として読み解いている。受胎告知の場面で描かれる聖母マリアの読書、文字を書く人の足元に置かれた巻物の意味……。描かれた本のページ上の微細な文字は、文字様の線にすぎない場合もあれば、聖書の一節や、天使のお告げに対するマリアの返答が記されていることすらある。
「書物」を描いた写本作品をテーマ別に展開する本書は「書物」の図像学研究の基礎となるだろう。