蠢く
昆虫や魚、鳥たち。春の芽吹きや風にゆれる麦の穂。時ににんげん。
自然のかすかな動きをそのままに感受し、歌として紡ぎ続ける著者の第十一歌集。
――言葉を短歌の形式に入れたときに、身体ごとぴったりとはまった感覚があった。
形式とは揺れ幅をもつ器であることを知り、その奥深さに佇んだ。
それが言葉の魅力なのだと思った。長い時のなかでゆっくりと、
言葉と真向かう日々があった。 (「あとがき」より)
【収録歌より】
蝶が来てそっと玉を抱いている燃える夕陽になるまでとまる
春の虫風にゆれとんでるようなゆれいるような
雨がぽつり 葉を打ちながれて雨が ぽつり
太古のはるか風のなかなる麦の穂が光に立ちぬ
すっくりのびる影法師おまえはだれだかたむく陽のなかにいて