新たな社会教育像を描く
本書は5つのテーマで構成されている。
第1部「社会教育の理念と歴史を捉え直す」では、社会教育の歴史と現状をふまえつつも、教育が社会を牽引し、人が社会の中心になるという牧野先生の総論に続き、市民の育成という古くて新しいテーマを公民館の歴史に即して捉え返す試み(上原)がなされる。
第2部「境界の問い直し」では、学校教育と社会教育(大野)、学校と塾(鈴木)という従来の区分を、一つの地域、一人の学習者に即して再考するというユニークな論考となっている。
第3部「福祉と社会教育」では、小川利夫の提起以来、近年まさに喫緊の課題となっている福祉的な観点からの子どもや若者の日常を支えることが、スウェーデンのインクルーシブな社会教育(松田)、日本の子ども食堂(入江)に即して考察される。
第4部「地域づくりの現代的課題」については、現在活発である韓国(李)と中国(馬・娜仁)の動向が紹介され、日本各地でも広がる地域づくりの活動にも示唆を与えるものとなっている。
第5部「施設・拠点のあり方」は、施設に関する制度から説き起こすことが通例の社会教育施設論から少し自由になり、思い切ってその可能性を探る試みに、日本とドイツの博物館(新藤)、台湾の生涯学習施設(山口)、オーストリアの芸術文化拠点(鷲尾)に即して取り組んでいる。
ー目次ー
はしがき
第一部 社会教育の理念と歴史を捉え直す
第二部 境界の問い直し
第三部 福祉と社会教育
第四部 地域づくりの現代的課題
第五部 施設・拠点のあり方
あとがき