満洲を故郷とする子どもたち
石森延男の戦中・戦後満洲児童文学考
《満洲に生きた子どもたちにとっての「故郷」とは――。》
それまで平板であった国語教材にドラマをもたらした文学者・石森延男。ファシズムの時代、満洲児童文学運動のカリスマ的リーダーでもあった彼が作品に盛り込もうとしたメッセージは何であったか。
戦中期の『咲きだす少年群』『日本に来て』『スンガリーの朝』、戦後の『わかれ道』『秋の日』『親子牛』など、満洲に関わる作品群を丹念に考察する評論集。つぶさに観察して描かれた子どもたちの姿や満洲の社会的・教育的背景等をもとに読み解いていく。
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石森の児童文学や教科書教材の面白さとは何だったのだろうか。一口にいえば、そこには人間がいてドラマがあったということではないかと思われる。特に教科書教材は平板で、血の通った人間が出てこなかった。そこに人間のいるドラマのある文学作品を持ち込んだのが石森だったといえよう。筆者の子ども時代の体験とも重なるが、日本のファシズムが最高潮に達した時期に、彼が如何に児童文学において対応していたか、石森のいう(戦時下の)「三部作」を中心に、彼がそこに盛り込もうとしていたメッセージは何であったかを、まず読み解いてみたいと考える。
(「はじめに」より)
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