近世藩医の学問と医療環境
近世は、ごく普通の人びとのあいだでも「病にかかったら医師に診てもらう」という考えが浸透していった時代である。しかしこの時代、公儀=幕府・藩は医療知識の獲得、社会への普及・提供に積極的な役割を果たすことはなく、社会全体を視野に入れた医療システムは、ついに構築されなかった。そうしたなかで、医学の発展を主導したのは、藩医身分の者たちだった。
そこで本書は藩医たちに焦点を定め、その身分=生業の特質、知識や技術の獲得・継承と社会への普及のありようを明らかにし、さらにその実態が近代の医療制度をいかに規定し、継承されたかを論じる。