宛名のない手紙

チェルヌイシェフスキー哲学的論戦珠玉

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著者:ニコライ・チェルヌイシェフスキー 多和田栄治 
出版社:白水社 
価格:4,500円

発売日:2025年03月
判型:四六判/ページ数:324
ISBN:9784560091340

内容情報(日販商品データベースより)

「言葉をもって空気をふるわす」

チェルヌイシェフスキーは、専制体制下のロシアにおいて生涯をかけて、社会体制の変革と民衆=人民の解放に向けた言論活動をおこなった。ここに集められた諸論攷の多くは1861年の農奴解放令に関連するものである。自由主義的な貴族や知識人からは「大改革」と称讃されたが、そこにはいくつか問題があった。農奴解放によって「農奴」は人格的自由を得たものの、同時に、分与された土地に対して膨大な額の支払い義務を負わされたことや、農村共同体の位置づけなどである。「土地つき解放」を求める彼の争点はここにあった。この「リベラルな」改革は真の意味での「農奴解放」とはいえず、圧倒的に不十分だったのだ。つまり、彼の闘争の矛先は、専制体制のみならず、不徹底なリベラリズムにも向けられている。

これらの論攷は、検閲を避けるために意図的に晦渋な文章で紡がれることもあいまって、ひじょうにわかりづらい。だが、チェルヌイシェフスキーの活動が、ナロードニキ運動やレーニンに影響を与えるように、現在のわれわれがそこから汲み取るべきは、偽りの「解放」を〓まされることなく、真の解放を求め、言論活動によってそれを具現化せんとするそのあくなき魂である。

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