ウォーターリリー
ここに生まれて
ここがどこだか まだわからない
耳を澄ますと
遠く聞こえてくる声
わたしはひとつの声であり、また多声である
過去を、未来を、今を、短歌は不安な世界をどう聞き取るのか。『歓待』から四年、あらたな方法を携え挑戦する一冊。
【歌集より】
あの川に兄が浮かんでこの沼に父が浮かんで 睡蓮咲いた
ウォーターリリーこんなしづかな戦場がここにウォーターリリーの姿に咲いて
生きるとはこのやうにリボンつけることリボンのうれしさ焼け残る服
わたくしは牝鹿に還り舐めにゆくウラニウムなほも鎮まらぬ火を
睡蓮の気持ちは人類誕生以前から変はらないまま 会へない人よ
装幀=毛利一枝