銀杏葉のたそがれる道
著者:尾辻紀子 出版社:文藝春秋企画出版部 文藝春秋 価格:1,400円 発売日:2013年11月 判型:B6/ページ数:204 ISBN:9784160087903
……入学して六ヵ月がたち、いよいよ白衣を着て臨床実習に出る前にキャッピング(載帽式)が行なわれた。 一年生はロッカー室で私服を脱ぎ、真新しい白衣に手を通した。白衣についている糊の粉末が飛び散り、曇りガラス越しに差し込む朝日に粒子がキラキラ光る。初めて手を通す白衣は糊が効きすぎていて、ガバガバして体に馴染まない。「案山子(かかし)みたい」 明子は鏡に映る姿を見てつぶやいた。 ……若竹寮を出ると、黄色く色づいた銀杏葉が風に吹かれて飛んでくる。(本文より)
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